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学生体験レポート<都市生活班>

中国教育最前線。愛知大学、現地重視教育
写真・文 佐渡多真子氏

CONTENTS

清 朝末期(1901年)、上海に設立された日本の海外教育機関である『東亜同文書院(後に大学)』を前身にもつ愛知大学では、1997年の現代中国学部開設 以来、一貫して現地重視の中国教育を行っている。2年次には学部生全員が、天津の『南開大学』に4ヶ月間留学し、中国語の実践能力を養う。3年次には、3 週間にわたり、中国社会の現地調査を中国語で行うことにしている。これまでに、北京、上海、大連、昆明、アモイ、ハルピンと現地調査を重ねてきたが、今年 度は華中の中心、武漢を調査地に選び、経済発展により変わり行く中国社会の様相を農村・都市・企業という広範な範囲から焦点を当てた。

おりしも、反日デモなどの影響で日中の緊張感が高まる中、7月31日、選抜された41人の学生は、例年通り現地に赴いた。この果敢なプロジェクトに同行取材し、愛知大学の「現地研究調査」プロジェクトをフォト・レポートしてみる。

*現場に触れる大切さ。

農村の家庭にて聞き取り調査を行う農村班 榊原大輔さん。

「中 国に来て、自分のこれまで抱いていた中国に対する常識や知識が、いかに小さく、少ないものだったのかということを痛切に感じました。」 今回の武漢現地調 査に参加している学生、榊原大輔さんはこう話す。「農村地区が貧困であるとか、裕福になって来ているとか、いろいろなデータを見てきましたが、ここに来て 実際に、家の作りは貧しいのに、そこに液晶テレビがあったり、トイレが立派な水洗だったりというアンバランスさを自分の目で見て、初めて、近代化に向けて 変わり行く中国の情況がつかめたように思います。百聞は一見にしかずという言葉を実感しました。」

「中国を直接肌で感じ学 ぶこと」をモットーとした愛知大学現代中国学部。この「現地研究調査」プロジェクトは、3年次、約40名の学生が夏休みを利用して中国の一都市をクローズ アップして調査を行い、調査終了後に現地の大学生を招いて中国語で報告会を行うもの。また、その成果は、毎年、「学生が見た中国社会」シリーズとして出版 (発行:愛知大学、発売:あるむ)されている。現地での調査といい、報告会といい、かなりのレベルの中国語能力が要求される。

日通商事武漢物流公司にて企業説明を聞く学生。

2 年次、天津の南開大学で4ヶ月間、実践的に中国語を学んだ現代中国学部の学生は、個人差はあるものの、3年生の段階で、ほぼ全員が中国語のコミュニケー ション能力を備えている。実際、武漢の現地調査に同行してみて、かなり訛りのある武漢の農民と、通訳を必要とせず環境問題や教育問題を意見交換している学 生がいるのには驚いた。

中国語学習は、漢字表記が日本語と似ているため、日本人にとって、読 解しやすい外国語ではあるかもれないが、実際には、その39母音が日本語とひとつも同じものがないといわれ、また、声調によって意味がまったく違ってしま うので、会話としては、とてもマスターしにくい言語でもある。

その中国語を使いこなす学生たち。中国語学習の秘訣を、この 現地調査プロジェクトの当初から現地責任者として学生を指導・引率する高橋五郎教授に伺った。「勇気です。話す技術というのは、実践により磨かれるもの で、机の上で勉強しているだけではなかなか上達しません。中国を理解するにしても同じです。話して通じなかったら、筆談でも身振り手振り、何でもいい。と にかく、自分の力で知りたい情報を集め、自分の意思を伝え、自分で感じる。この積極性を養うことが、中国語に限らず、一連の現地調査で学生に学んでほしい ことです。」

農村調査に同行すると、高橋教授の言葉通り、学生たちは、現場にいる農村の人たち、お年寄りでも子供でも、捕 まえたら離さないという心意気で、各自いっせいにノートを持って質問が始まった。外国人を見るのも初めてという農村の人たちとのコミュニケーションは、簡 単ではないと思うが、学生たちはとにかく諦めない。調査時間が終了しても、移動のバスのエンジン音を気にしながら、最後まで、ひとつでも多くのデータを取 ろうと懸命だ。

古田二路中百倉儲(スーパーマーケット)にて、
幹部に質問する都市生活班の学生。

学生の聞き取り調査を見守る、高橋五郎教授(左後)、
李明亮先生(右後)。


*現地調査の意義

調査先のコーディネートなどをてがけ、初回から中国側現地引率教員として生徒たちに同行している『中国労働関係学院』の李明亮先生は、愛知大学の「現地研究調査」プロジェクトをこう評価する。

「こ のプロジェクトは、日中の交流という意味で、大変意義のあることだと思います。私の経験から申しますと、‘84年、胡耀邦元総書記が日本人3,000人を 中国に招いた『日中青年交流』の場で、私は初めて日本人と会いました。まだ、大学の日本語学科一年の時でした。それまでは、テレビや本でしか、日本のこと を知る機会がなく、それだけでは、ほとんど、日本が実際はどんな国なのか、どういう人たちなのか、さっぱりわかりませんでした。日本人と会ったあの時初め て、自分の中で日本のイメージを持つことが出来たのです。現在、中国の学生はまだこのような形で、日本に行って社会調査するという機会を持つことはほとん どできません。日本と中国の実際的な交流はまだまだ不十分だと思います。そのような意味で、このようなプロジェクトは、これから、日中の間で、範囲を拡大 し、継続していくことが大切だと思います。」

*反日デモ、歴史問題、日中の緊張感の中で

武漢の繁華街・中山大道

現地での学習、調査という試みは、学生の中国理解にとって、大きな成果を期待できるのは確かだ。けれども、昨今の日中の政治的緊張の中で、今回の武漢現地調査に関して、延期、中止という声は出なかったのであろうか。現地の事前準備に奔走した李明亮先生は続ける。

「今 回の反日デモを始め一連の緊張した出来事は、大変な障害になりました。現地での調査に関して、事前に中国のいろいろな機関に許可を取らなければならないの ですが、例年、全く問題がなく取れる許可が、今年はなかなか取れませんでした。街頭調査が生徒の安全面から見合わせになったり、テーマも、日中間の政治的 にデリケートな部分に関するものは関係機関から許可が下りませんでした。実際、実施出来ないのではないかと心配した時期もあります。けれども、私たち中国 側も、日本側の教職員も、学生も、皆、この現地調査を絶対にやめたくない、継続したいと思っていたので、何度も何度も内容を調整しました。」

例 えば、調査テーマを変更せざるをえなかった学生もいる。「去年のアジアカップ騒動のすぐ後、現地プログラム(語学留学)で天津に行き、そこで出会った中国 の学生と話をしました。一連のアジアカップ騒動で僕が日本で報道された内容から抱いた中国の印象と、現地で実際に感じた印象は全く違いました。それで、今 回の反日デモの報道も、実際にこちらで聞いてみたらいろいろと違う面も見えるのではないかと思って、日本製品不買運動に関して、中国の情況を調べてみたい と思っていたのですが、現地に来てみたら、そういうデリケートな問題は調査しにくい情況になっていて、テーマを変更せざるをえなくなったのも事実です。長 い間このテーマで準備をしてきたので、随分落ち込んだりもしましたが、でも、来る前から、本当に来られるのかという不安が皆の中にあったので、今回来られ たことは本当にうれしいです。」と、話す学生もいる。

慈恵農場公室にて。

鎮小学校にて。

引 率の日中教職員も、まず第一に学生の安全に気を使っている。「実際、こちらに来てみると、想像以上の街の緊張感にびっくりしました。今回調査に来ている学 生たちは、本当にしっかりした学生ばかりなんです。だから、私は、学生たちが、故意に中国の人たちを不快にしたり、刺激することは絶対にないと信じていま す。けれども、物事の弾みで、誤解や、事故や、何に巻き込まれるかわかりません。些細なことが、大きなことに繋がってしまったら大変です。そういう緊張感 が一時も離れることはないのです。最後まで無事に終了できることを願っています。」と話す高橋五郎教授。現地で大事な学生を預かる責任者、引率教職員のプ レッシャーは、第三者には想像もできないものかもしれない。

*愛知大学の変わらぬ理念

東風本田汽車有限公司にて。

け れども、そのような情況の中での今回の現地調査決行に関して、現地責任者の高橋五郎教授はきっぱりと断言する。「情況が悪いからといって、中止にしようと いう気持ちは、最初から全くありませんでした。もちろん、学生、引率教職員の不安や負担は拭い去れません。けれども、国と国の関係は、良い時もあれば悪い 時もあるのが当然です。いわば、一つの船に乗っているようなものです。波の穏やかな時には一緒に乗り、波が荒くなったら、目的地に着く前に自分だけさっさ と降りてしまうというものではないはずです。そういう荒波も乗り越えて、最後まで漕いで行かなくてはならないものだということを、学生に伝えたいのです。 どんな情況にあっても、現実の日中関係を学生に認識してもらい、そのうえで、どうやって友好のために道を切り開いていくことが出来るのかを考えて行く、こ れが愛知大学の中国教育の理念でもあります。」

武漢のランドマーク、黄鶴楼

2003 年のSARS騒動の時にも、天津・南開大学で中国現地プログラム(語学留学)に参加していた学生たちに現地で授業を続け、天津市内で感染者が確認された時 点で、SARS患者が多発していた北京を経由せずに天津からチャーター便で全員を無事帰国させた。このチャーター便には、現地の中国人講師陣も乗り込んで 学生と同行してもらい、日本で中国現地プログラムの授業を継続した。あの時の大学の理念と大胆なサポート体制を思い出させる。

日 中の関係が厳しい中でも、現地に赴き、中国を少しでも多く理解しようと頑張っている学生。また、その学生たちを誠心誠意支えようとしている教職員はじめ日 中両国の関係者、こういう人たちの存在がある限り、政治的にどのような情況になろうとも、日中の交流は途切れることはないと確信する。

東風本田汽車有限公司にて、総務部副部長に質問する
企業班 坪井一憲さん。

「実 際に中国に来て、中国の人たちに対する印象はすごく変わりました。中国に来る前は日本人に対して、冷たい人たちなんじゃないかと思っていたんですが、知り 合ってみると、すごく優しい人たちでした。大学の先生はもちろんですが、お店で買い物をしても、道で出会った人でも、心から接してくれているように感じま す。とにかく、話さなきゃ友達になれないんだ。話してみたら、友達になれる人たちなんだ、とわかったことが一番の収穫です。」今回の武漢現地調査に参加し た学生、坪井一憲さんは言う。

日中の人々の間で、もっともっとこのような交流がなされていけば、お互いの印象は大きく変わっていくことだろう。お互いの国への認識不足から、多くの誤解が生まれているのが、今の日中の現状なのではないかと思う。

佐渡多真子プロフィール:
北京在住カメラマン。国内外の雑誌等で活躍。
写真集に「幸福(シンフー)?」(集英社)、「ニーハオ!ふたごのパンダ」(ポプラ社)。
「人民中国」、「NHKラジオ中国語講座」などに写真を連載中。


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