2000年度秋学期 生物・生態VA,B 講義ホームページ
(車道校舎では、生物・生態Uとして開講しています)

ヒトゲノム計画(ヒトゲノムの解読を目的とした世界的プロジェクト)
ヒトゲノムって何だろう?

 

Q ヒトゲノムとは

生物が持つ全遺伝子を表わし、その生物の全遺伝情報を意味する。では、DNAと遺伝子、遺伝情報との関係は?

DNA:4種類の塩基が2種類ずつ対になり、その塩基対約30億個がらせん状に組み合わさってできている。

4種類の塩基:アデニン(A)/チミン(T)、グアニン(G)/シトシン(C)

30億個の塩基対を文字にたとえる、つまり30億字とは28ページの新聞(朝刊)でざっと50年分に相当する。  

↓   

遺伝子:タンパク質を作るための設計図であり、全DNAの約5%(約1.5億個の塩基対)に相当 では、全遺伝子数は?……従来10万個位と予測されていたが、実際はかなり少数のようだ。

   ↓

染色体:ヒトでは46本:22対+XX(女性)、22対+XY(男性)

 

 Q 解読して何が分かるの?

人が生まれてから死ぬまでに必要なすべての遺伝子が明らかになる。これは、病気の発症に関連した遺伝子から、各個人の体型、体質、性格、好みまでも決定する遺伝子の存在が明らかになる可能性を秘めている。

糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発症には、いくつもの遺伝子が複雑にからんでいる。これらの病気が起こる仕組みの解明には、ゲノム解読が有効である。発病の仕組みが分かれば、予防もしやすくなる。さらに、病気の発症に関連した遺伝子が明らかになれば、将来その病気が発症するか否かを、遺伝子から診断することが可能になる(遺伝子診断)が、その反面、遺伝子にもとづいた”差別”が発生する危険がある。事実、アメリカでは生命保険や医療保険加入時の、保険会社による差別に対する訴訟が多発している。これに対し、アメリカではクリントン前大統領が、遺伝子情報にもとづく個人差別撤廃の声明を出し、さらに連邦政府職員の雇用、昇進等において遺伝子による差別を禁止する条例を制定した。遺伝H詩の解読は,個人を特定すること,例えば親子鑑定や、犯罪捜査における犯人の特定にも有効である。

 

 解読完了はいつか?

2003年といわれているが、早まる可能性もある。

1990年HUGO(Human Genome Organization)によるヒトゲノム解読計画開始時には、明確な完了年度は示されていなかったが、その後DNA解読装置の性能向上と民間ベンチャー企業の参入に伴い、完了目標は2005年、2003年と早まり、既に今年の2月には38,000個の遺伝子が特定されたとの発表がベンチャー企業から出された。

 ベンチャー企業は何を狙っているのか?

新薬開発や遺伝子診断に関する分野のビジネスを標的としている。病気に関わる

遺伝子からは、新しい治療薬や診断薬の開発が可能となる。体質に関わる遺伝子が発見されれば,個々人に適した薬の開発が可能となり、これは大きなビジネスチャンスとなる。しかしここで,遺伝子の特許に関わる問題が発生する。


リンク

科学技術会議生命倫理委員会の策定による「ヒトゲノム研究に関する基本原則について(平成12年6月14日)」

http://www.sta.go.jp/shimon/cst/rinri/gensoku00614.html

生物生態VA,Bのトップページ