2000年度秋学期 生物・生態VA,B 講義ホームページ
(車道校舎では、生物・生態Uとして開講しています)

1.生命操作技術の基礎


(1)生命操作技術の基礎
  a.バイオテクノロジーの歴史
   第一世代;生物機能の偶発的利用 → 経験的利用
     醗酵;酵母によるアルコール醗酵の利用(ビール、ぶどう酒、パン、味噌、醤油等の
                         醗酵食品類)
     酵母におけるアルコール発酵機能の発見(パスツール、1876年ビールの研究から)
     細胞抽出液による発酵現象の発見 → 酵素の発見(ブフナー、1897年)
     DNAの構造解明 → 生命現象解明の進歩
                   (ワトソン,クリック,ウィルキンソン,1953年)
    
   第二世代;生物機能の改良 → 遺伝子工学,細胞工学
        生物機能の模倣 → 再生工学 → 人工生命体 →→サイボーグ?

     主要な技術; 遺伝子操作と細胞培養法

(2)DNAと遺伝子
  a.DNAの構造を理解する……化学構造と立体構造(3次元構造)、染色体との関係
      4種類の塩基が、約30億個らせん状に組み合わさってできている。
        4種類の塩基:アデニン(A)/チミン(T)、グアニン(G)/シトシン(C)
      30億個の塩基一つ一つを文字にたとえる、つまり30億字とは28ページの新聞(朝刊)
      でざっと50年分に相当する。  
                                 ↓   
   遺伝子:ヒトでは全DNA(約30億塩基)の約5%に相当、残りはjunkDNA
       イントロンとエクソンの混在
                                 ↓
    染色体:ヒトでは46本:22対+XX(女性)、22対+XY(男性)

  b.DNA、遺伝子、遺伝情報の各機能と関係を理解する
    遺伝子:タンパク質を作るための設計図であり、DNAの約3億〜1.5億個の塩基に相当
       では、全遺伝子数は?……10万個 or 7万個 or 3万個?
       レトロウィルス,RNAウィルスでは、RNAも遺伝子となる
   
   遺伝情報:3塩基配列が一種類のアミノ酸に対応
        全塩基配列はアミノ酸(20種類)の種類と並び方に対応→タンパク質を決定
   
   情報の流れ: DNA→RNA→タンパク質;セントラルドグマ 

  c.遺伝子解読計画(ヒトゲノム計画)……完成は200x年?
    ヒト遺伝子解読での公的機関(米、欧、日)と民間ベンチャー企業との熾烈な競争
      →→ 新薬開発および遺伝性難病の治療をめぐる特許の取得競争

     **DNA塩基配列の解明と遺伝子解読との大いなる相違に注意

   現在、全遺伝子が解読されている生物は800種類以上;
    単細胞生物…500種類以上のウィルス、25種類以上の細菌類(大腸菌など)、酵母
    多細胞生物…線虫(C.エレガンス)、ショウジョウバエ、ヒト(ミトコンドリア、21番、
             22番染色体)
   現在進行中は;ヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ、イネ、シロイヌナズナなど

  d.核内DNAとミトコンドリアDNAとの関係

(3)いろいろな遺伝子の発見
  a.遺伝病の原因遺伝子
    例えば、大腸ポリポーシス遺伝子;保持者は必ず大腸ガンを発症
        福山型筋ジストロフィー;日本人に特徴的、弥生時代に発生か?
        ハンチントン舞踏病;欧米人に特徴的

  b.人種、地域、環境に特異的な遺伝子;進化の過程で淘汰された遺伝子
     鎌状赤血球貧血症(赤血球をつくるタンパク質の異常);マラリア多発地帯(11番)
     サラセミア(赤血球をつくるタンパク質の欠損);地中海沿岸地域
     HIVに強い遺伝子;コーカサス人に多い?
     喘息の原因遺伝子;トリスタン・ダ・クンハ島(南大西洋の孤島で、住民の50%上が
              喘息、または喘息傾向と喘息罹患率が世界最高の地域
     特定の白血病ウィルス抵抗性の遺伝子;パプア・ニューギニアのハガハイ族

  c.体質、性格、好みも遺伝子か?
     肥満の遺伝子;脂質代謝異常に関わる遺伝子が、数種類既に発見されている(1,7,8番)
     攻撃性に関与する遺伝子;脳内物質をコントロールする遺伝子
     自閉症の遺伝子、
     ホモセクシュアルの遺伝子も存在か(X染色体上)?

  d.遺伝子のビジネス
    "遺伝子ハンター"の暗躍

     遺伝子は特許対象か?……アメリカでの特許関連省庁の対応変遷

    

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