3.ホルモンの話

  3−1.そもそもホルモンて何?・・・その働きと形

   (1)機能(働き)
      細胞、組織、器官の間での情報伝達および活動調節 ⇒ ホメオスタシス(恒常性)の維持
   
      生体内に構築されているネットワーク

        脈管系(血液系、リンパ系) → 血管内を化学物質が移動 (物流システム)
        神経系 → 神経細胞内を刺激(電流と神経伝達物質)が移動 (ITシステム)

      血管内を移動する化学物質のうち、内分泌腺から放出され、 特定の器官(標的器官)で

      上記の働きをする化学物質をホルモンと呼ぶ 

      ホルモンの移動; 内分泌腺 → ホルモン → 標的細胞あるいは標的器官

     **ホルモンの5つの条件**
         1.体内の限られた器官で作られる・・・内分泌腺
         2.化学物質であること
         3.血液中を移動
         4.体内の限られた器官に作用する・・・標的器官
         5.微量で効果を発揮する

   (2)構造(形、素材)

       素材の違いから2種類に区分 (本来は3種類に分類するが、ここでは便宜的に2種類に分類)

          ステロイドホルモン・・・脂質、コレステロールが出発材料

          ペプチドホルモン・・・ペプチド、タンパク質同様、アミノ酸が連結した構造を持つが、

                      アミノ酸の数が少ないもの 〜200個位まで)

                      ヒト成長ホルモンは191個、インスリンは51個のアミノ酸から構成されている)

   (3)伝達機構---ピッチャーとキャッチャーの存在

       分泌器官(ピッチャー): 内分泌腺
       受容器官(キャッチャー): 標的器官 → どのようにしてホルモンを受け取るか?

         受容体(レセプター)の存在

          特定のホルモンを捕まえるため、受容体(レセプター)を持つ

          → “形”によってお互いを認識する ⇒ 分子認識
        

                exp.酵素と基質の反応における「鍵と鍵穴説」と同様のメカニズム

          受容体の存在  ⇒ ホルモンが微量で作用する理由
                     ⇒ マスコミに対する“見る目、聞く耳”

         受容体の存在場所
             ペプチドホルモン---細胞膜
             ステロイドホルモン---細胞内、DNAと結合

   (4)細胞間コミュニケーションの進化
  

      外界からの刺激をどのように伝達するか?
        

        (1)単細胞生物: 細胞=個体
                    ⇒ 外からの刺激を受け取り、即反応する

        (2)小さな多細胞生物:外からの刺激を受け取るとすぐ近くの細胞に伝達する(バケツリレー)

        (3)大きな多細胞生物:外からの刺激を、すばやく遠方の細胞まで伝達する必要が発生

                      →長い軸策を持つ細胞の出現(神経細胞)

                      →化学物質(ホルモン)の放出(内分泌細胞の出現)        

3−2.ホルモンと脳内物質(神経伝達物質)

    神経伝達物質; 化学伝達物質の一種類、神経細胞内で合成され、

              主にシナプス部分に存在

      シナプス: 神経細胞の接合部に存在するわずかな隙間、

      刺激伝達は、神経細胞内を電気的信号として伝播し、接合部であるシナプ スでは出力側から放出される神経伝達物質を受け側がキャッチすることによ り伝達する。受け手の神経細胞は、神経伝達物質をキャッチすると、その 情報を再び電気的信号に変換して、刺激の伝播を続行する。

      神経伝達物質として、現在約30種類の物質が知られている。そのうち、ア ドレナリンは副腎髄質でも生合成され、ホルモンとしても知られている。

      また、人が持つ喜怒哀楽といった感情が、神経伝達物質の種類によりコント ロールされていることが最近解明されつつある。このことは、人の感情も化学 物質でコントロールできることを示している。アメリカでは認可されている抗 うつ薬のプロザックは、この結果を応用した薬である。