“図誌:古代羌の末裔”

青蔵高原東端の峡谷地帯に居住するチャン族やギャロン・チベット族、川南チベット族、プミ族は、かつて中国の西北縁辺に居住した古代遊牧民「羌」の末裔であると伝えられている。伝説によれば、チャン族は殷に敗れ、秦に故郷を追われて紀元前に南下を開始し、min江流域に定住した。そして6世紀頃までに四川西部を南北に貫流する大河に沿ってさらに南下し、四川、雲南、西蔵にまたがる峡谷地帯に「某羌」諸集団を形成し、広く分布した。彼らの言語はともに漢・チベット語族チベット・ミャンマー語系チャン語群に属し、信仰や風俗習慣などにも共通点が指摘されている。しかし彼らの居住地は東の中国王朝と西の吐番の間にあってしばしばその対立抗争にまきこまれた。その結果、チャン族は漢文化の影響を深く受け、ギャロン・チベット族などチベット族諸集団はチベット仏教を受容して「チベット化」し、中華人民共和国成立後の民族識別ではチベット族とされた。また最も南下したプミ族は周辺のナシ族やイ族、ペー族と共住した。
李経奉・劉如仲編『清代民族図誌』(青海人民出版社1997年)では、中国王朝が大きく版図を広げた清代乾隆年間の『皇清職貢図』(乾隆26、1761年)を原資料として、当時の諸集団を現存の少数民族にあてはめ、その歴史や風俗習慣等を解説している。
ただし現存の55少数民族は中華人民共和国成立後の民族識別によるものであるため、同書では清王朝の満族を除く42民族がとりあげられ、不明は「附西北・附西蔵・附貴州」の項に収められている。未収の民族はアルタイ語族系言語を有するシボ、トンシャン、タジクなど北方の8民族とスイやマオナン、キンなど西南の4民族であるが、西南の少数民族に関する情報が多かったことは、当時の民族政策の方向をよく反映していて興味深い。同書には、チャン族は「羌族」に15図、四川チベット族は「附西北」に4図、「蔵族」に4図、「附西蔵」に1図、プミ族は「普米族」に3図収められている。
-Contents-
チャン族 四川チベット族 プミ族

参考文献
1. 李経奉・劉如仲編(1997)『清代民族図誌』青海人民出版社
2. 國立故宮博物院編輯委員会編・荘吉發校注(1990)『謝遂《職貢圖》滿文圖説校注』國立故宮博物院


トップページへ戻る
注)一部中国語表記の為、文字を画像として表示してありますので読み難くなっておりますが御了承下さい。