中国問題定例講演会
第11回
〈講師・テーマ〉
緒形康 愛知大学現代中国学部教授「中国私営企業主の政治参加」
   1997年に開催された中国共産党第15回全国代表大会において、私営企業の法的な地位が初めて公式に認められた。私営企業を重要な柱とする経済の非公有部門が社会主義経済の重要な構成要素であるとされたのである。以後、私営企業主の政治参加は以前にまして活発化している。しかし、2001年5月に江沢民中国共産党総書記が「3つの代表」論を打ち出した際、私営企業にも党委員会を設置すると述べたことが新たな波紋を呼んでいる。党がこうした政策に転換した背景は何か、今後、私営企業主の政治参加はどのような形態をとるかについて、分析を試みる。
〈講師・テーマ〉
服部健治 愛知大学現代中国学部教授「中国経済の現状と日本企業の対応」
 一昨年来行われている内需拡大政策は、今年も継続され、経済成長率も8%を越えるまでに回復してきた。その上、今年は社会主義市場経済を推進する中国にとって、節目の年に当たる。まず第一に第10次5カ年計画の第一年目であり、全面的な市場経済化がうたわれている。第2に中国のWTO加盟の可能性がより高まっており、加盟が実現すれば、中国国内の産業と経済改革に与えるインパクトは大きい。 第3に北京も候補地の一つである2008年のオリンピック開催地が7月に決定する。もし北京に確定すれば、国威発揚の好機となり、これまた各分野に与える影響は大きい。第4に中国主催で10月に上海でAPEC総会が開催される。中国経済の国際化に寄与することは間違いない。 こうした中国経済のマクロ状況をふまえ、日本企業が問われているのは、「市場としての中国」に対してどのような経営戦略を打ち立てるかである。そのポイントは「現地化」と現地法人の権限強化に尽きる。マクロの視点とミクロの対応を勘案しつつ、対中投資の現状と課題について説明したい。