中国問題定例講演会
第13回
〈講師・テーマ〉
加々美光行 愛知大学現代中国学部教授「党大会を控えた中国の内外政治と日中関係」
   加々美光行 愛知大学現代中国学部教授「党大会を控えた中国の内外政治と日中関係」  昨年の江沢民七一講話以来、私営私有経済が社会主義経済体制の不可欠の構成要因とみなされ、新興資産階級の入党が合法化された結果、公有経済の縮小と中国経済の自由主義市場化がいよいよ加速するようになった。こうした動向に「左派」や軍部の「原理派」は当然反発したが、中央は左派雑誌「真理の追求」や「中流」の停刊といった威圧的措置を以って対抗し、その指導性を確保した。その矢先、9・11テロが勃発し、反テロ・グローバルネットワークを形成する必要から、米国は中国に接近し対中融和策を採用したため、中国の外交もこの自由化政策を後押しする効果が生まれ、事態は中央政府の望む方向に推移するかに見えた。ところが、今年1月に入って、アフガン情勢が米国の思惑通りに一段落を告げると、米国の対中政策は9・11以前の状況に回帰する兆候を見せ始めた。1月8日付国防総省の「秘密報告」(Nuclear Posuture Review、3月9日付New York Timesによってその概要が暴露された)が、米国の所有する核ミサイルが攻撃対象とする仮想敵国7カ国の中に中国が入ることを明らかにしたのである。この結果、再び中国共産党内部と軍部内にそれまでの対米楽観論を批判する動きが再燃し始めている。対米楽観論批判は当然、内政面での過度な自由化政策への批判に連結する。こうした情勢を受けて、秋の党大会で江沢民の後継者と目されている胡錦涛が訪米し、ブッシュから「一つの中国論」の原則堅持の言質を取った。胡錦涛は従来の内外政策の骨子である自由化策を踏襲することを義務付けられており、難しい舵取りを迫られている。
〈講師・テーマ〉
服部健治 現代中国学部教授「WTO加盟後の中国経済と日本企業の対応」
 「世界の工場」と推奨され、「メイドインチャイナ」の製品によって、日本の産業空洞化を引き起こす中国は"脅威"なのか? いや、中国は"脅威"でなく、"驚異"であり、「工場」は「企業」への成長過程にある一部分であり、"made in China"の本質は"made in China by Japan"である。  WTO加盟によって第3の開国を迎えた中国経済の転換点を解説するとともに、「市場としての中国」に対する日本企業の経営戦略を教示する。