中国問題定例講演会
第3回
〈講師・テーマ〉
小田川圭甫 愛知大学現代中国学部教授 「中国の国有企業改革について」
  中国が現在推進している諸改革の中でも、国有企業改革は最重要且つ最も困難な課題の一つである。近年の国有企業の経営不振はきわめて深刻で、赤字企業や存続不能な企業が多数顕在化してきており、且つ、国有企業の経営悪化は即、財政悪化に直結している上、さらに金融機関の体質不良とも連動して、財政と金融の機能不全を招来することが危惧されている。このため、現在国をあげて企業改革に取り組みつつあるが、多くの関連諸施策の整備も不可欠であり、その帰趨が内外に与える影響には極めて大きいものがある。こうした視点にたって、国有企業の現状,改革の経緯と戦略,その課題等について概括してみたい。
〈講師・テーマ〉
今井理之 愛知大学現代中国学部教授  「中国の貿易動向と人民元の行方」
 中国の貿易は90年代に入り輸出入商品構成,貿易方式別構成,企業形態別構成など大きく変化してきている。なかでも94年以降の貿易収支の黒字定着は重要な変化であり、外貨準備高を急増させる要因となった。97年のアジア通貨・金融危機以降、人民元の切り下げ観測がたびたび出ているが、中国政府は目下のところ人民元の切り下げを否定している。他方で、98年の輸出の伸びは大幅に鈍化し、99年に入ってからは現在までのところ前年同期比マイナスが続いており、貿易収支の黒字は大幅に縮小している。元切り下げに代わって増値税(付加価値税)の輸出還付率引き上げが、昨年数次にわたり実施された。今年1月にも大幅な引き上げが行なわれた。増値税還付率引き上げによって輸出の減少をどれだけ食い止めることができるかが当面の最大の注目点である。以上をふまえて近年の貿易の変化と貿易政策を検討し、人民元の行方を予測する。