● | 第4回 |
〈講師・テーマ〉
加々美光行 愛知大学現代中国学部長 「中国政治50年の回顧と21世紀の展望」 |
中国政治の50年は他に類例を見ない個人崇拝的な権威主義体制をもって出発した。毛沢東崇拝は、スターリン崇拝を初めとした諸々の個人崇拝が集団主義的な党独裁を補完補強する役割を果たしたのと対照的に、むしろ党の集団的な鉄の一枚岩主義を否定破壊する側面を濃厚に持っていた。この点で毛沢東政治はイデオロギー集権的性格を持つが、政治集権制として特徴づけることはできない。むろん経済的にもソ連社会主義に比べ集権的性格が薄弱と言わざるを得なかった。この点陳雲は人民公社もまた分権的な「改革」への性格を有したと述べている。文革終焉後、改革開放の到来とともに、この中国独自の権威主義体制が否定され、毛沢東崇拝も否定されたが、同時に集団主義的な党独裁を核とした新たな権威主義体制が導入された。それは政治集権制樹立を目指したが、同時にそこでは市場経済化による経済分権化の方向も見られた。21世紀中国政治の最大の課題は、この集団主義的な政治集権制の権威主義体制をいかに克服するかの一点にかかっている。 |
〈講師・テーマ〉
嶋倉民生 愛知大学現代中国学部教授 「中国経済50年の回顧と21世紀の展望」 |
@人民中国の50年は、政治重視の毛沢東型の30年と経済重視のX小平型の20年に区分して良いだろう。 A毛は中国を独立させ米ソ両大国と対決した。その代価は「独立自主」「自力更生」というスローガンを余儀なくされた封鎖と孤立を招き、産業・技術は遅れ経済水準は著しく貧しいものとなった。BXは「国を閉ざしていれば、世界の科学・技術から遅れるばかりである」とのべ、対外開放と市場経済化を大胆にするが、これは革命前の中国人のその能力と姿を甦らせるものである。 C経済には周期がつきものである。毛時代にもサイクルがあった。Xの時代に入ってからは市場経済型のサイクルを見せ始めている。 D中国の経済発展は、日本・NIES・ASEANとも異なる特徴をもっている。沿海・内陸の各分野での格差は処理を誤ると不安定要因となる。後発性の利益はより大きいであろう。人民中国の初期には社会主義型の強権的重化学工業化を強行した。その遺産はマイナスの面だけではない。「独っ子」政策は来世紀前半には労賃上昇を招き始めるであろうし、きわめて著しい長寿社会は福祉負担の巨大化を想定させる。 E独裁を維持しつつ、市場活力を発揮できるならば、来世紀の中国経済はやはり巨大なものであろう。 |