化学物質の有害性…環境ホルモン(外因性内分泌撹乱化学物質)の現状… |
1. 環境ホルモンが問題視されている経緯
私達の身の周りには人間が作り出した数万種類ともいわれる化学物質があふれています.私達はこれらの物質から恩恵をこうむり、豊かな;生活を営んでいることは事実ですが、一方ではこれらの物質がかけがえのない地球を汚染し、生物の生存を脅かしていることも確かです。
近年、生体内のホルモンと類似の働きを示す物質が人工化学物質の中に存在することが解かってきました。ホルモンは動物や植物が生命現象を営む際に、発生、成長、生殖および免疫系等に重要な役割を担っていることがよく知られています。特に雌性ホルモンのエストロゲンや雄性ホルモンのアンドロゲンは、生殖生理において中心的役割を果たしています。したがって、これらのような性ホルモンの働きが阻害されると、その個体だけではなく次世代まで影響が及ぶことになります。
そこで、主として食物を媒体として環境から生体内に摂取され、生体内の性ホルモン作用に異常を起こす人工合成化学物質を特に外因性内分泌撹乱化学物質(通称「環境ホルモン」)と呼び、現在地球規模で観察されている野生生物の生殖異常現象との因果関係が注目されるようになりました(図1、図2、3、表1)。
日本では4年ほど前から内分泌撹乱化学物質への関心が急激に高まり、特に一昨年一年間はテレビや新聞等を通し、ややパニック的とも言える状況で取り上げられていた。
(1)環境ホルモンが問題視された具体的現象(表2)
諸外国:野生生物の生殖異常、水生生物の個体数減少、生殖器の悪性腫瘍増加、
精子数減少
日本 :精子数減少、水生生物(貝類)の生殖異常
精子数減少に関するその後の経緯 → 図4,5
(2)日本における環境ホルモン対策の現状
行政:環境庁の対応方針…SPEED'98(http://www.eic.or.jp/eanet/)
(Strategic Programs on Environmental Endocrine Disrupters '98)
国立環境研究所 (http://nies.go.jp/kenko/dioxin/plan.html)
「リスク評価のためのダイオキシンによる内分泌かく乱作用の解明」研究紹介
企業:PRTR(Pollutant Release and Transfer Register) (http://www.eic.or.jp/eanet/)
研究者、学会等:分析方法、技術の開発、標準化、規格化
(http://www.soc.nacsis.ac.jp/jsedr/)
生殖機能、母子健康に関する動物実験、疫学データ収集
NGO:全国市町村出生性比動向
イタリア・セベソでのダイオキシンTCDD事故後の男児出生比減少(0.351)
2.注目される問題現象の移行
(1)PCB・ダイオキシン類等のPOPsが注目、有機臭素系化学物質の残留
PCB・ダイオキシン類は生体内での作用様式が他の環境ホルモンと異なる
→雌性ホルモン受容体とは結合しない、むしろ甲状腺ホルモン障害による
クレチン症乳児の増加……知能、発育障害
アメリカ・ミシガン湖の魚を食べた母親から生まれた子供での知能障害、
オランダでの新生児調査、
日本でのクレチン症発見率 (図6)
日本でのダイオキシン関連データ;母乳中含有量(図7)、
摂取量、排出量 (図8、表3)
新生児…知能障害
成人 …甲状腺自己免疫異常
*POPs(Persistent Organic Pollutants)
「陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画」において指定された
残留性有機汚染物質
(2)被爆経路:食物連鎖 + 経気道暴露
新たに注目された環境ホルモン…ディーゼル排気粉じん中の物質(ベンゾ[a]ピレンなど)
ダイオキシンの新たなる被爆経路
3.化学物質の安全性
化学物質の安全性とは?
環境汚染化学物質の有害性(ケミカルハザード)とリスク管理
→→ 予測不能なハザードへの対策→→予防原則?
歴史的事実:フロン(CFC)……オゾンホールの原因物質
DDT……1939年合成殺虫剤として開発(P.H.ミューラー)
1981年製造、販売、使用の全面的禁止、
IPCS(International Project of Chemical Safety)国際化学物質安全性計画
WHO,UNEP,ILOの共同プロジェクト
↓
ICSC(International Chemical Safety Cards)国際化学物質安全性カード
専門家以外を対象とした、化学物質に関するさまざまな情報をデータベース化
(性質、毒性試験の結果、参考文献など)