■質問、用語の解説コーナー
「生命科学基礎」に関連した解説コーナーです。
このページでは講義に関連した質問と用語を解説します。
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Q.浄水器中には分離されたごみや微生物がそのまま放置されているのですか? A.その通りです。しかしフィルターを通過することはないので、私達が使用する水の中にまで入り込むことはありません。でも、あまり気分のよいものではありませんから、浄水器を使用するときは、まず浄水器の体積と等しいくらいの水を流してから使用すると良いでしょう。
Q.トイレットペーパーを水に流してよい理由は?本当に溶けているんですか?ろ紙のように水に強い紙との違いは何ですか? A.一番大きな相違はセルロース繊維の長さです。紙は原料となるセルロース繊維が長いほど、繊維の絡みあいが複雑になり、水に強い丈夫な紙になります。ただし、厚い紙になりますが。トイレットペーパーは、比較的短い繊維から作られているので、水中ですばやく繊維間の結合が切れ、繊維が水中に分散した状態になり、それが水に溶けているように見えるのです。
Q.キトサンはダイエット食品ということは聞いていたのですが、なぜダイエットによいのですか。 A.キチンやキトサンは、炭水化物の仲間であり、穀類や豆類の主成分であるデンプンとよく似た化学構造をしています。デンプンと同様にヒトの体内で分解されますが、その際生成するエネルギーの量がデンプンと比較してかなり少ないのです。また摂りすぎても脂肪として蓄積されることも殆どないので、ダイエット食品として市販されているのです。
環境アンケートの用語説明
Q.変異原性とはA.大腸菌などの細菌類に与えると、突然変異の原因になることを変異原性といいます。このような性質を持った物質のことを、変異原性のある物質と呼び、ヒトに対しては、発ガン性を持つことが疑われています。ですから逆に、ある物質が発ガン性を持つかどうかを調べるためには、まず細菌類を使って変異原性の試験を行い、もし変異原性があったならば、つぎにねずみなどの小動物を使った発ガン性の試験を行います。
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**酵素に関連して**
Q.プリントの図を見ると、酵素による分解といっても双方向の矢印がついている。酵素は分解だけでなく、合成も行うのか? A.プリントの図中では、物質の変化する反応にすべて双方向の矢印が付いています。これは、酵素が分解と合成の双方を助けることを意味しています。しかし実際は分解の方がずっと速いので、見かけ上分解だけを助けているようにみえるのです。
Q.薬かなにかの作用で酵素が壊れてしまうことはあるのか? A.あります。ただし、“壊れる”といっても酵素の構成材料であるタンパク質がつぶれてしまうことはほとんどありません。むしろ酵素の働きが阻止される、酵素が働きたくても働けないようにブロックされてしまうのです。私達が服用している薬の中には、酵素に結合してその働きをブロックするものがあり、このような薬の作用を“副作用”と呼んでいます。
Q.セルロースを分解する酵素を持つ動物は存在するのか? A.セルロースを分解する酵素は“セルラーゼ”という酵素ですが、この酵素を持っている動物は多分、フナムシ位なのではないかな……??
Q.私達が40℃くらいの熱を出した時、酵素の働きは弱くなるのか? A.弱くなります。消化能力が低下したり、体がだるいなど、平常時と違う状況になる原因のひとつは、酵素が働いていないためです。
Q.酵素はタンパク質を分解するが、他のタンパク質は分解しないのか? A.タンパク質を分解する酵素は、“プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)と呼ばれている一群の酵素だけです。これらのプロテアーゼは、タンパク質ならほとんどのものを分解します。ですから総ての酵素はプロテアーゼにより分解されます。なぜならば、酵素はタンパク質からできているからです。なかには、プロテアーゼにより体の一部分を分解されると初めて、酵素として働き始めるタンパク質もあります。
Q.酵素入りの洗剤で洗濯するとき、ぬるま湯で洗濯するときれいになるのは、酵素の最適温度によるのか? A.その通りです。普通酵素が最も働く温度は37℃前後です。要するにヒトの体温、つまりヒトの体内で最も働きやすくなっているわけです。ですから、37℃前後のぬるま湯で、しかも洗濯物を、1時間くらい洗剤液につけておいて酵素をしっかり働かせてから洗濯をすると、きれいに汚れが落ちますよ。
**栄養素・エネルギーに関連して**
Q.生体肝臓移植で肝臓を一部あげてしまった人の肝臓はどのように再生するのか? A.肝臓は一部が欠損すると、その部分の肝細胞が細胞分裂を開始し、元の大きさに戻るのです。
Q.尿はなぜ黄色のか? A.タンパク質や核酸が分解、排泄される時にアンモニアができ、そして尿素になります。尿素は白色の物質ですから、本来尿は無色なのですが、摂取した食物の種類や体調等でさまざまに着色されてしまいます。
Q.ネコは太陽に当たって、毛でビタミンを造るそうですが、なぜ太陽でビタミンができるのか? A.太陽のエネルギーを使って作られるビタミンは1種類だけで、それはビタミンDです。ただし生体内にあらかじめプロビタミンDと呼ばれる物質が存在している場合だけです。ネコの場合、毛にプロビタミンDが存在しているのかな?プロビタミンDは、乾し椎茸中にたくさん含まれていますよ。
Q.価値観が変化したからといって倹約遺伝子は不必要なのか? A.現在の社会情勢下では活躍する場はなさそうですが、だからといって決して不必要な遺伝子ではありません。生体は遺伝子を捨てることはしません。またいつか活躍できるかもしれないので、しっかりと保存しておきます。その結果、ヒトの持っている全DNAの90%以上は“がらくたDNA”と呼ばれ、生命維持には不必要な存在になっているのです。
Q.「エネルゲン」の内容物を検証すると……。 A.効率よくエネルギーを産成するために必要なグルコース(ぶどう糖)、クエン酸、ビタミンB群および無機等が添加されていますね。
Q.ビタミン類はヒトでは生合成されない訳は? A.ヒトでは、ほとんどのビタミン類は生合成されません。また、生合成されるビタミンでも、生成量がわずかなので生体が必要とする量には足りません。ビタミンCは、ヒトだけでなく霊長類すべて、さらにはモルモットも生合成ができません。しかし微生物はビタミン類の生合成能力をもっています。ヒトは進化の過程で雑食種となり、しかも多種の微生物と共生(いわゆる腸内細菌群)している状況が、おそらくヒトのビタミン生合成能力を消失させていったのでしょう。
Q.胃下垂だと太れないのはなぜ? A.胃下垂の場合、胃酸の分泌も不足します。したがって食物が分解(つまり消化)されにくくなります。分解されないと小腸で吸収されず、そのまま排泄されることになります。これではエネルギー源にもならないし、ましてや太ることもできません。
Q.アンモニアを尿素に変えるのは肝臓では? A.アミノ酸や核酸の分解排泄物であるアンモニアを尿素に変えるための一群の酵素を、「尿素サイクル」といいます。この尿素サイクルは肝細胞中に存在します。肝臓内でアンモニアを尿素に変換することにより、細胞毒性の強いアンモニアが血液中に出ないようにしているのです。
Q.血液がアルカリ性になるとなぜいけないのか? A.血液中に存在する酵素達や、特殊なはたらきをしているタンパク質などは、中性から弱酸性の条件で良く働く性質があります。ですからアルカリ性になると、これらの酵素達が働かなくなってしまい、生命維持ができなくなるからです。