トップへ



設立の経緯

 本研究会は、愛知大学共同研究助成金を基に設立された。共同研究期間は1997年〜1998年の2年間である。以下に、本共同研究の趣旨を述べる。

  女性学の発展の中で、多くのフェミニストはジェンダー研究を熱心に行なったが、性差すなわち歴史や文化の所産ではない男女の差については、多くを追求しなかった。なぜなのか? ひょっとしたら、やっぱり女は生物としても「弱き性」なのだと証明されるのがこわいからではなかったのか、と思えてきた。しかし、そんな恐れはもはや無用であろう。反対に生物としての強弱を比べれば、そして科学的にきちんとアプローチをすれば、多くの場合、軍配は女性にあがることはだんだん明らかになってきているではないか。

 人間は、出産の時点では男児が女児より多く産まれる。受精の段階ではその差はもっと大きいといわれる。それが生きている間に同数となり、やがて老年となるとずっと女性が多くなる。男女の平均寿命は、衛生状態・栄養状態等が極度に悪い社会では女性のほうが短いが、それらが改善された社会では女性のほうが長くなり、さらにその格差は年を逐うて大きくなっていくというのが、今地球規模で見られる現象である。

 またアダムとイヴの神話に見られるように、かつては人間存在の源は男性であり、女性はそのアバラボネの一本から作られたのだと考えられ、男を助け、慰め、その子を産むためにあると教えられてきた。しかし科学の発達によってそのような信念は根拠を失って、逆に、人間に限らず生物の起源はメスであり、オスはその一部が分化してできてくるという過程が明らかになってきた。

 このように女を弱い性、劣った性とする神話や偏見から解放されるのは、科学の力によって可能となる。女性を第二の性たらしめた社会の状況を分析することはもちろん必要だし、ボーヴォワール以来多くの研究がなされたのは意義深いことであるが、二〇世紀後半に飛躍的に発展した生化学、遺伝の仕組みや脳の解明等々、最新の科学の光に照らして男女の差を明らかにすることをめざして、今私たちは、大きくステップを踏み出したい。



トップへ