閉じる
NEWS
【特別講演会】揖斐潔名古屋高等裁判所部総括判事にご講演頂きました。

 2015年6月6日(土)10:45~12:15名古屋キャンパスL1104教室において、 共通教育科目「法とくらし」 (法学部の前嶋准教授と吉垣教授が担当) の授業の一環として特別講演会が行われました。 佐藤元彦学長の挨拶の後、名古屋高等裁判所部総括判事の揖斐潔氏が 「法的ものの考え方とは?―裁判に求められるもの―」 というテーマで講演されました。 

 

揖斐判事は、冒頭、十七条憲法第五条(絶餮棄欲、明辯訴訟:官吏たちは饗応や財物への欲望を捨て、訴訟を厳正に審査しなさい)の理念は、現行憲法32条(裁判を受ける権利)や14条(法の下の平等)に受け継がれているとされ、正義の実現をはかる裁判所の組織について説明されました。テーマである、法的ものの考え方について、裁判は、具体的事実を小前提とし、法規を大前提とする法的三段論法によって権利ないし法律関係の存否を確定することによってなされるとされ、まず、嫡出の推定のケースを題材に法規の解釈を説明され、つぎに、消費貸借、遺贈、マンション風害損害賠償ケースを取り上げられ、具体的な事実認定の在り方について説明されました。事実認定に用いる証拠は当事者が提出したものに限定されることから、当事者は証拠欲しさにそれを偽造するケースもあるところ、「ありのまま」を出すことが必要であるとされました。裁判における真実は、絶対的真実ではなく、合理的な疑いを容れない程度の真実(訴訟法的真実)であり、当事者はこれについて証拠を収集することが重要であることを強調されました。これに関連して、当事者が陥りやすいあやまりについて、医療過誤ケース等を用いられ、裁判所と当事者の間に認識のズレが生じる理由を説明されました。続いて、近時の民事裁判の課題について、時代の変化にともなって事件が変化してきていること、事件の複雑化、困難化傾向がみられることを挙げられ、徘徊症状がある認知症の男性が電車にはねられて死亡した事故をめぐる男性遺族に対する鉄道会社の損賠賠償ケース等を例に、問題点を説明されました。最後に、司法制度改革についても触れられました(裁判員裁判につき、裁判員経験者の95%が裁判に参加して良かったと回答しているとのデータも紹介されました)。

 

当日は、法学部生の他、他学部生や教員等400名以上が参加し、揖斐判事の話を熱心に聴いていました。講演終了後、法的問題についての質問にととまらず、裁判官としての苦労や関与した事件類型についての質問も出されました。質疑応答の後、小島透法学部長から、「現職の高裁部総括判事から今日のような話を聴くことができ、大変勉強になったと思います。講演会を契機として、理論と実務のバランスに配慮しながら勉強して下さい」との挨拶がなされ、講演会は終了しました。無記名アンケート(終了後任意提出)には、素晴らしい内容であり、講演者に感謝したい、このような講演会を多く開催してほしい旨の意見が多く書かれていました。

 

   

画面topへ
copyrights 2003-NOW Aichi University Faculty of Law All Rights Reserved.