2015年10月20日(火)16:30~17:45、名古屋キャンパスL1102教室において、
吉野孝義先生(本学非常勤講師、大阪大学法科大学院客員教授、元大阪地方裁判所長)
に「法整備支援のささやかな経験から」と題するテーマでお話頂きました。
吉野先生は、裁判官をご退職の後、複数国の法整備支援に関与されています。
当日、先生は、
そのうちの一つであるモンゴルにおける「調停制度強化プロジェクト」を中心に、
スライドを用いながら、支援内容および方法について説明されました。
2012年11月まで、ウランバートル市内の2か所の裁判所にパイロットコートを設け、
調停事件を試行的に実施されたこと(第1段階)、
2013年4月に調停法が正式に施行され、
全国の裁判所で調停事件を扱うことになったところ、
それに関する支援(第2段階)を行われていることについて話をされました。
その国で初めて利用されることになる調停制度をその国の紛争解決手段として定着させるためには、
司法、裁判所の地位を高めていくことが、遠回りのようではあるが王道であり、
具体的方策として、裁判官や調停人の能力を高めることはもちろん、
当事者の代理人となる弁護士の協力が不可欠であるとされました。
法整備支援に携わる際に考慮すべき点として、
- 相手国の法制度、実情に対する一定の知識、理解を有していることが当然の前提となる
- 研修に際して、相手国のニーズに対する正確な理解が基礎となる
- 1 および 2 を前提として、わが国の法制度、法律実務についての広い知識、
経験が必要であり、
法整備支援に携わる者がこれを持ち合わせていて始めて相手国のニーズに的確に応えることができる
- 法の対象はあくまでも人間であり、法を運用するのも生身の人間であるから、わが国と相手国との国民性の違いも含めて、人間性に対する深い理解がその基礎となっていることに留意する必要がある
という4つを挙げられました。最後に、英語をはじめとする外国語の勉強の必要性を強調されました。
吉野先生は、モンゴルにおいては、裁判官、
裁判所職員の中で女性が多数を占めていること
(モンゴルの調停人の60%は女性であるとのことであった)、
国土が広いため、送達について問題が生じていること、
日本法教育が盛んであること等も紹介されました。
当日は、「民事訴訟法」「民事執行法」の履修者のみならず、
1,2年生も参加していました。
参加者からは、大変有意義な話であり、
このような会を多く開催してほしいとの感想が多く寄せられました。
(文責:吉垣実)
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