「説明と同意の手続きと個人情報の保護について考える」
~研究目的によるデータ収集の観点から~
原口 智
(愛知大学法学部4年 2016年4月時点)
ヒトを対象とする研究データを収集する場合、対象となるヒトに対し研究概要を説明し研究参加についての同意を得なければならない。また、収集した研究データの個人情報は保護されなければならない。一方では、母集団の特性を反映する偏りのない標本を得ることができなければ、ヒトを対象とする適切な研究を遂行することができない。
説明の同意の手続きにおける研究計画書作成から参加者募集までの段階で不可欠なのはインフォームド・コンセントステートメントとコンセント・スクリプト作成である。インフォームド・コンセントステートメントとは保護者(対象が未成年者の場合)へ研究内容や方法について説明し同意を得るための文書である。この文書を配布し事前に説明を行うことで参加者を募り研究方法や危険性などの理解を促し同意を求める。コンセント・スクリプトとは研究参加者に対し研究実施当日に改めて言葉で説明し研究参加を最終確認するためのものである。コンセント・スクリプトは口頭で直接説明するため対象の年齢などに応じて理解しやすい言葉で原稿が作成される必要がある。この2点のうち、特にコンセント・スクリプトについては、いまだ日本において広く普及しているとは言えない。
これらの手続きを経て母集団を反映するより多くの標本を得るためには、今後考慮するべき点として研究参加への同意を判断する人の要因と説明に含まれる内容の要因の2つが考えられる。判断する人の要因に関しては測定参加への同意不同意を判断する際、研究データを得るための測定方法に対する過去の経験や考え方が測定参加への積極性等に影響する可能性を考慮する点である。一方、説明内容の要因とは研究参加への同意・不同意を判断する際に重要視される内容について十分に配慮されているかという点である。これらの点に留意してインフォームド・コンセント・ステートメントは作成されるべきである。
次に個人情報の保護についてである。研究上必要な場合であっても個人情報の保護の観点から測定値を得られない場合がある。例として保育現場における体力・運動能力測定のデータを園外で分析しようと試みたが公立園の園児の測定値に関しては園外でのデータ保管や分析が不可能であった事例が報告されている。公立園や民間園に関係なく偏りのない幼児のデータを得るためには何らかの方策が必要であると考えられる。
今後、研究目的によるヒトのデータ収集の観点から、つまり母集団を反映するより適切な標本を得るためには、説明と同意の手続きと個人情報の保護について再考し、有効な対策について広い視点から明らかにしていくことが必要である。
報告者の村瀬智彦教授(右側)とレポート作成者の原口さん(左側)
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