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【法学部研究懇談会】「有期労働契約をめぐる法的課題」報告

2016年6月30日(木)16:00~名古屋キャンパスL1102教室において、 本学法学部の金井幸子准教授(労働法)が、 「有期労働契約をめぐる法的課題」というテーマで報告されました。

 

当日は、法学部の教員や学生のほか、他学部の教員や学外から社会保険労務士の方が参加され、 闊達な議論が行われました。 報告内容につきましては、 以下の松岡弘樹君(法学部4年:金井ゼミ) のレポートをご一読ください。

 

次回は、松井吉光准教授(物理学)の報告「素粒子物理学の基本法則」を、 次々回は、永戸力准教授(行政学)の報告を予定しています。 是非ご参加ください。

 

法学部研究委員 吉垣実

 

学生によるレポート

「有期労働契約をめぐる法的課題」

松岡 弘樹

(愛知大学法学部4年 2016年7月時点)

 

パートタイム労働者、契約社員、派遣社員、臨時雇など非正規雇用の労働者は、 現在、約1980万人おり、これは雇用者全体の40.5%に相当する。 その原因のひとつとして、定年退職を迎えた高齢者が非正規雇用となって再び労働者になることがあげられる。 そして、この非正規雇用労働者のほとんどが、期間の定めのある「有期労働契約」である。

 

有期労働契約は多様な働き方の1つであるというメリットがあるが、その分問題も多く存在する。 まず、雇用の不安定さである。 有期雇用労働者は契約期間中の雇用は保障されるものの、期間が満了すると自動的に契約が終了してしまう。 また雇止めの問題も生じてくる。 雇止めとは、有期雇用労働者の短期間契約が何度も更新され、 長期に渡って雇用が継続した後に使用者が契約更新を拒絶することをいう。 これは、長く働きたいと思っている労働者にとっては、非常に不安定な地位に置かれているといえる。 次に、正社員との賃金・労働条件格差である。 有期雇用労働者は期間の定めがあるという理由で、正社員より低賃金・労働条件・処遇格差のもとで働いている。 しかし、実際は正社員と変わらない業務を行っていることが多い。 このように、有期雇用労働者は正社員の安価な代替労働力として利用されており、 必要がなくなると雇止めされることになり、雇用が不安定になるという問題がある。

 

最近では、雇止めの問題を考える上で不更新条項との関係も重要となってくる。 不更新条項とは、有期契約の更新時に企業側から「次回以降は契約の更新をしない」旨を提案することをいい、 労働者が合意することで成立する。これによって、有期契約が反復更新されて、 通算5年になる前に雇止めをして、 労働契約法18条の無期転換権の発生を回避しようとするケースも考えられる。 しかし、労働者側としては無期雇用への転換が実現できないため、 無期転換を妨げる目的で設けられた不更新条項は無効と解されるべきである。 そもそも、契約更新時に不更新条項を提示された場合、労働者は不更新条項への合意を更新の条件とされ、 雇止めとなることを避けたい労働者は不更新条項に応じざるをえない。 その背景を見ると労働者側の心理としては、 提示された会社側の条件に応じなければ不利益を被るかもしれないと考えるのが一般的であり、 不本意ながら同意してしまうことがほとんどである。 そして、不更新条項に労働者が同意すれば、労働契約法19条の適用が排除されることにもなりうる。 そのため、不更新条項については、公序良俗に反して無効と考えるべきである。

 

今回は「雇用の安定性」という面を中心に見てきたが、 有期雇用労働者をめぐる問題は雇用だけではなく、広く労働条件の面にも及ぶ。 現在大学生である私たちはほとんどの人がアルバイトをしていて、有期雇用労働者の一員となっている。 近年では「ブラック企業」や「ブラックバイト」という言葉を耳にする機会も増えてきた。 例えば、表示された時給よりも低い賃金で働かされている、時間外労働が長い、残業代がつかない、 休憩を十分に取らせてもらえない、週の労働時間が法定された時間を超えているなど、 これらの被害にあっている人も少なからずいるだろう。 このような問題も有期雇用労働者をめぐる問題の一種である。 有期雇用は労働者側にとっても使用者側にとってもメリットがあるが、 他方で内在する問題も数多く存在するため、 日本の労働実態を安定させるにはこれらの問題を解決する方法を模索しなければならないと感じた。

 

報告者の金井幸子准教授(左側)とレポート作成者の松岡さん(右側)

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