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【法学部研究懇談会】「ドイツ諸州都等の建築監督上の義務履行確保運用」報告

2017年5月11日(木)13:30~17:00 名古屋キャンパスM2001会議室において、 本学法学部の西津政信教授(行政法)が、「ドイツ諸州都等の建築監督上の義務履行確保運用」 というテーマで報告しました。

 

当日は、教員のみならず9名の学生が参加(1年生1名、2年生4名、3年生1名、4年生3名)し、 闊達な議論が行われました。 報告内容につきましては、 当日配布のレジュメおよび中島真一君(法学部4年:西津ゼミ) のレポートをご一読ください。

 

 

次回は、山下和也教授の報告を予定しています。 是非ご参加ください。

 

法学部研究委員 吉垣実

 

学生によるレポート

「ドイツ諸州都等の建築監督上の義務履行確保運用について」

中島 真一

(愛知大学法学部4年 2017年5月時点)

 

現代社会では、 行政によって一般市民の利益を確保するために建築基準法に基づく建築規制など様々な規制が設けられている。 そして日本では、その規制違反者に対しての義務履行強制執行手段として行政代執行が整備されている。 しかしながら、 執行手段が行政代執行のみですべての違反者に対して適切に義務履行を強制することができるのだろうか。

 

日本で唯一一般的に適用することのできる行政代執行では、 違法建築物を除却する等の代替的作為義務は履行強制することができる。 しかし、違法建築工事中止命令等の不作為義務は履行強制することができない。 また、行政代執行の適用件数も極めて限られており、機能不全を起こしているとされている。 この現状を打破するために、行政強制法が充実しているドイツを例に見てみる。 強制執行手段として行政代執行、強制金(わが国では執行罰)、 直接強制と三種類もの手段が整備されている。 強制金と直接強制は代替的作為義務だけでなく、 非代替的作為義務や不作為義務についても履行強制することができる。

 

ドイツでは行政強制手段として強制金が最も多く活用されている。 ドイツでは州ごとに行政執行法があり手続の一部や強制金の戒告上限額が異なる。 しかしほとんどの州の強制金手続は、 まず相手方の聴聞を経て違反行為是正命令と期限付き強制金戒告をする。 そして、履行期限が徒過したのち強制金賦課決定がなされ、 強制金を徴収するという流れになっている。 義務者が自主的に命令を履行する目的達成率は、8割から9割にも上っている。

 

また、行政代執行手続ではまず、是正命令・戒告を行う。 そして命令履行期限が徒過したのち代執行の事前徴収が行われ、 その後代執行の決定がされ代執行の実施が行われる。 さらにこの後、費用の事後徴収も行われる。 日本の行政代執行手続と大きく違うのは代執行費用の事前徴収ができる点である。 日本では費用の徴収が事後徴収に限られており、是正命令・戒告を行ったのち、 違反者が資産隠し等をすることにより代執行費用の徴収を免脱するケースが発生する可能性がある。 回収できなかった費用はもちろんその行政自治体の財源から賄わなければならない。 その点ドイツでは事前に費用を徴収でき代執行費用の回収率が低迷するようなケースが比較相対的に起こりづらい。 また、代執行費用の事前徴収には間接強制効果があり、 自発的に違反者が違反状態を改善する効果が期待される。

 

日本の行政は義務違反者に対しての強制執行手段は完璧に整備されているとはいえない。 さらに唯一整備されている行政代執行も改善の余地が少なくない。 多くの規制受益者に対する重大な法益侵害が生じてしまう前に、今後、 将来的な立法作業や行政執行体制の整備が望まれると考える。

 

報告者の西津教授(左側)とレポート作成者の中島さん(右側)

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