中国の環境問題について
03c8056稲吉理恵
目次
(T)初めに
(U)大気汚染
現代中国の大気汚染は60年代の日本に匹敵
酸性雨について
(V)水汚染
(W)その他の問題・報告
@急速で高い経済成長
Aごみ・騒音・砂漠化
B人口問題
C環境白書を発表
D農地の10%以上が汚染
(X)2006年【中国】南=台風、北=干魃 今年は天災の年
健康被害の懸念
(Y)中国の大気汚染が日本を襲う?!
(Z)今後の展望−日本に大きな協力の可能性
京都議定書について
([)政府の対応策
(\)最後に
感想
参考文献
(T)初めに
私が沢山の時間をかけて悩んだ末に、『中国の環境問題』をテーマにしたのには訳があります。
2004年の8月から12月まで、現地調査で中国に行っていたときに中国の環境が日本とはかなり違うと感じたからです。毎日天津の街を出歩いていて正直こんなにも空気が悪いとは思っていませんでした。私は授業が終わったあとは買い物や散歩に行っていました。夜帰ってくると、なんと鼻の中が真っ黒!!びっくりしました。友達も同じようになっていて、「これ、なんかすごいよね。」と話していました。そして天津の空気は霧のようで、数十メートル先もかすんで見えるほどでした。また街中の河には流れがなく、ドロドロしていました。日本と海を隔ててすぐ隣の中国。正直こんなにも日本と環境が違うとは思いませんでした。もちろん中国のすべての都市がこのような状態ではないと思います。
このように感じたことから、私は中国の環境、主に大気汚染と水汚染について調べようと思いました。社会人になったら中国に旅行に行きたいしもっと中国の環境がよくなればいいなと思っています。そのためにも中国の環境の現状と対策なども勉強したいと思いました。恐らく調べだしたらきりがないくらいの資料が出てくると思いますが、頑張ってまとめていきたいと思っています。
アジア諸国はここ数年の急激な経済発展により、環境問題が複雑になってきたと思います。特に今回調査する中国は飛びぬけて悪く、これから改善していかなければならないのです。環境問題と一言で言ってもいろいろとあり、大気汚染・水質汚染・廃棄物問題の三廃問題と、砂漠化は特にひどい状況にあります。
経済発展を続けることで世界経済に占める輸出入を始めとした役割が増大しているアジア諸国は、地球環境問題に積極的に取り組む責務を負っているということができると思います。[i]
(U)大気汚染
まず中国の都市部の大気汚染は、北部が南部より深刻になっていることがわかりました。都市部において、人体に影響を及ぼさない大気汚染の程度を示す「2級基準」をクリアしている地域は改善傾向にあり、2003年度で41.7%となったものの、裏を返せば6割近くの地域が「人体に影響を及ぼす」状況下にあります。
中国の都市の大気汚染状況について、中国の国家環境保護総局が、約340都市を対象に行っている調査の結果について、1999〜2003年度の推移をまとめたものが第2-1-128図です。これによると、大気の質が「優秀」又は「良好」に分類される都市の割合は増加する一方、「中度汚染」又は「重度汚染」の都市の割合は減少しており、都市の大気状況は次第に改善してきています。しかしながら、汚染されているとされる都市(軽度汚染、中度汚染、重度汚染のいずれかに該当する都市)は、いまだに過半数に上り、依然として、汚染の状況は深刻であると言えます。
第2-1-128図 中国都市の大気質状況の比較
次に、排気ガス中の汚染物質量を第2-1-129表に示しました。これを見ると、工業部門からの二酸化硫黄の増加が目立ちます。国家環境保護総局によると、排出量最多業種は電力業で、2003年には全業種の61.7%を占め、中国の電力需要は経済発展に伴って上昇してきていることから、二酸化硫黄排出量の急増が懸念されます。
しかし、私は環境問題と工業化はつながりがあると思いました。工業化はこれから中国では止めることのできない、止めてはならない大切なものです。ですが、そのせいで環境問題が多くなっていることも事実です。
また、大気汚染の他の原因として、自動車の排気ガスがあり、これは自動車の保有台数が増加したことと、排気ガス中の汚染物質量が多いことによります。北京市では98年秋、深刻な大気汚染に見舞われましたが、その主要な原因は自動車排気ガスでした。このため、元凶として目を付けられた「面的」というワゴン型のタクシーが禁止され、99年1月15日までに1万台が溶鉱炉で焼却処分されています。中国研究所編(2004)によれば、中国における自動車の保有台数は、168万台(1980年)から2,421万台(2003年)へと急激に増大していて、また、1990年代末の中国の自動車1台当たりの排気ガス量は先進国の10〜15台分に相当し、汚染の濃度も先進国の同種類の車より3〜10倍も高いです。さらに中国南部では酸性雨による汚染も広がる傾向が続いているのです。
深刻化する大気汚染に対して、中国政府や各都市自治体は、環境基準の厳格化や罰則の強化等を実施していますが、工業化の進展や自動車数の増加が見込まれる中、環境対策に対する今後の動向が注目されます。[ii]
第2-1-129表 排気ガス中の主な汚染物質量
やはり、近年のアジアの都市における大気汚染の主要因の一つは、自動車の保有台数の増加であるという指摘があります。
また、中国の大気汚染対策は、現状ではとにかく石炭を排除しようという方針で進められているようです。しかし、石炭を使っているから大気汚染が深刻というわけではなく、中小炭鉱から中小企業という石炭の流れが大きいという産業構造の要因が中国の大気汚染を一層深刻化させているということであるそうです。 近年、中国は高い経済成長を遂げていますが、発電能力が需要に追いつかず沿海地域を中心に2003年から停電が発生、現在では恒常的な状態に及んでいます。当然火力発電所はフル稼働しているが、これにより石炭燃焼が増加しているのです。
中国のエネルギーの源泉は石炭が70%以上を占めています。中国は石炭の埋蔵量が多く、今後もエネルギーの主力となる可能性は高いです。しかし、石炭は煤煙・煤塵など環境破壊物質を放出する最たるものです。環境十五計画においても、石炭産業を環境保護対策の重点産業と捉え、高硫黄炭の採掘の制限、脱硫装置の設置など、さまざまな施策を実行することが明らかにされていますが、その規模と範囲が大きく、かつ多方面にわたっているので着実な環境対策が全国的に必要とされています。
現代中国の大気汚染は60年代の日本に匹敵
日本の大気汚染は、戦後の急速な工業化が進められた1960年代が全国的なピークでした。大都市の上空はスモッグで覆われ、四日市の工業地帯など重化学コンビナートでは煤煙や排ガスを避けるために、子供たちはマスクをして登校しました。現在、日本の二酸化硫黄の環境基準は日平均濃度で0.04ppm(年平均濃度で約0.02ppmに相当するとされる)と決められていますが、60年代の四日市や川崎市では最高で約0.08〜0.12ppmに達し、当時の大気汚染が基準を大きく超えていたことがわかります。
日本の大気汚染は1970年代に入ってから、工場における脱硫装置の導入などが急速に進んだ結果、大幅に改善されていきましたが、その後、自動車の排気ガスなどを主因とする窒素酸化物や粒子状物質による汚染が全国的に増え続け、今なお解決されない大きな問題となっています。
日本の大都市における大気汚染(1970年前後の二酸化硫黄濃度)
中国の大都市における大気汚染(最近10年間の二酸化硫黄濃度)
一方、中国で発表されている大都市における二酸化硫黄の年平均濃度を日本の基準と比較すると、ほとんどの都市が基準を上回り、とくに太原をはじめいくつかの都市では日本の工業都市の大気汚染が激しかった時代に匹敵する濃度であることが示されています。
また中国では、フッ素含有量が多い石炭を使っている地方が広く分布しています。こうした地域の農山村では、暖房や炊事などで使用する石炭のばいじんが室内で乾燥させているトウモロコシやトウガラシに付着し、これを食べることでフッ素が体内に吸入され、歯牙フッ素症や皮膚ガンのような健康被害を起していました。現在の中国における大気汚染は、工場の煤煙、石炭による都市暖房、自動車排気ガスなどの原因により、二酸化硫黄や二酸化窒素、粒子状物質などの問題が深刻化しているのです。
先進国に二酸化炭素などの温暖化ガスの排出削減を義務づけた京都議定書が2005年2月16日に発効した。日本は2008年〜2012年の間に温暖化ガスを1990年比で6%削減するという制約を自ら負うことになりました。同時に中国もこの議定書を批准したものの、発展途上国としてこの排出基準の遵守義務はないとされています。
しかしこの10年、平均実質成長率10%という高成長を遂げ、人口も13億人を突破した中国は、CO2排出量でも2000年には世界全体の12%を占めるなど他国を凌駕。最近は石炭の燃焼による硫黄酸化物が原因とされる酸性雨が広く観測されるなど、深刻な環境汚染が進んでいます。
アジアでは日本、中国、インドの3ヵ国が他に比べて非常にCO2排出量が多いことがわかりました。そのなかでも中国が飛びぬけて多く、発電部門のCO2排出量が増大しています。1997年には日本のCO2排出量の総量を、中国の発電部門のCO2排出量が上回るに至っています。
私はCO2の増加は経済発展の象徴でもあると思っています。実際にGDPとCO2発生量の関係を考えてみると、中国やインドをはじめアジアの多くの国がGDPの伸びと同時にCO2発生量も増加しています。一方、西ヨーロッパの環境先進国は、GDPの伸びと同時にCO2は減少しています。このことから、環境に配慮した経済発展に努めればGDPが一万ドルを超えると、環境破壊は抑えられ、むしろ環境浄化の方に転じることがわかります。[iii]
北京市環境保護局と同市発展・改革委員会は29日、2010年までの環境保護計画を発表しました。排ガス規制を強化して大気汚染の軽減を図る他、水質保全などを通して、08年の五輪開催に向けクリーンな環境の確保を目指すということです。
計画によると大気汚染対策としては、天然ガスの使用拡大により石炭燃料の消費を抑制するため、内モンゴル自治区の長慶ガス田と北京を結ぶ第二パイプラインを完成させます。市中心部での火力発電所の建設を禁止する他、建設工事現場からの粉じん排出を処罰するということです。
自動車の排ガス規制では1995年以前に販売された高排気車の08年までの全廃を目指し、「排ガス税」の徴収も検討しています。
水質保全では市内を流れる清河、北旱河など30の河川で1000あまりある汚水排出口を撤去し、ダムの水質改善によって飲用水を確保します。
このように北京オリンピックに向けて、着々と準備が進んでいるようです。[iv]
酸性雨について
酸性雨は二酸化窒素や二酸化硫の排出を原因として起こるもので、中国では主に長江以南、青海チベット高原以東、四川盆地に分布しています。
酸性雨の仕組みは、工場や自動車から排出される大気汚染物質が、雲となり、それを含んだ強い酸性の雨が降ることを言います。よって、酸性雨の原因は、大気汚染物質であることがわかります。大気汚染物質とは、硫黄酸化物(SO2)と窒素酸化物(NOx)が主な原因物質で、これらは、工場や火力発電などから出る硫黄物を燃焼すると、硫黄酸化物となり、火山の噴煙などにも含まれます。硫黄酸化物に関して日本では、1967年あたりがピークで、それ以降は徐々に減少しつつあります。中国は1993年にアメリカを抜いてこの排出量は世界でトップになってしまい、他の国とは異なり、その排出量は増加の傾向にあります。
また窒素酸化物は、ボイラーや焼却炉といった窒素化合物が酸化されたものが窒素酸化物であり、自動車の排気ガスもそのひとつ。この他にも有害大気汚染物質を出すものがたくさんあります。そういったものが、雲になり酸性雨となって、地上に降るのである。この他の原因としては、中国大陸からの大気汚染物質が飛来してきていることも原因のひとつです。中国の工業化は増加しており、それに伴って、使用しているエネルギーとなっている石炭や石油などの燃焼による大気汚染物質が多く含まれているのです。その結果、大気中に含まれている大気汚染物質が、偏西風などの影響で、日本へと流れてきているのが現状です。
国際的にも中国の二酸化硫黄排出量はずば抜けて多く、日本や韓国にも移動していると言われています。このままではその影響を日本が受けてしまうので対策を立てなければならないのです。
(V)水汚染
総合的な汚染指数に照らし合わせると、2003年度の7大水系の汚染程度は深刻な順に、海河、遼河、黄河、淮河、松花江、長江、珠江となっています。
海河水系の汚染は深刻で、X類以下の水質の個所が50%以上を占めています。遼河水系の全体的な水質は比較的劣っており、X類以下の水質となった水域が40%ほどを占めました。黄河水系の全体的な水質も比較的劣っており、支流の汚染は恒常的に深刻な状態です。淮河本流の水は主にW類で、支流と省境の流域では水質が依然として劣っている。松花江水系の水も主にW類でした。珠江水系、長江本流、主な1級支流の水質は良好で、U類が中心でした。前年と比べて、黄河、遼河、淮河の汚染程度は若干の改善が見られる一方、松花江、珠江、黄河支流の汚染が悪化しています。
水質汚染の状況と原因について、国家環境保護総局が実施した主要な河川の水質状況が第2-1-130表に示されています。これを見ると、大気汚染と同様、近年においては、水質改善の傾向が見られるものの、人が直接接触することに適さないほど汚染された水域が、主要河川の6割以上の水域を占めていて、全体的に、水質汚染はいまだに深刻な状況にあります。
汚水の原因となる廃水について、量の推移(1998〜2003年度)を見ると、生活廃水が増加しています(第2-1-131図)。この主たる要因は、都市化の進展であると思われます。中国の都市では、人口が増加し、また、大量に水を消費する生活様式が増えてきたため、汚水処理施設の整備や水資源の再利用等が重要ですが、2003年度の都市の生活廃水の処理率は36.1%と低く、上下水道インフラの整備も進んでいません。このまま大量の汚水が河川に垂れ流される状況が続けば、市民の安全な生活が脅かされ、また水不足によって経済成長へ悪影響を与え得ます。こうした観点から、汚水処理施設の増設等は、各都市にとっての課題です。
他方、工業廃水は、生活廃水に比べて増加率が小さく、ほぼ横ばいです(第2-1-131図)。また、汚水処理についても、工業汚染源規制の強化に伴って、処理施設の導入が進み、国家環境保護総局によると、2003年度、工業廃水排出量に占める排出基準達成量の割合は約89%に達しました。しかしながら、2004年初め頃、工業廃水を未処理のまま垂れ流し、付近の河川水の汚染物質の濃度が、基準値の20〜50倍に達して、26日間にわたって近辺の3市(人口計80〜100万人)への水道供給が停止されるという事故も起きており、対策強化が求められています。
このような水質汚濁とともに、水資源の不足が深刻化しています。中国では、水資源が南部に偏っており、北部では慢性的に水が不足しています。黄河が1997年に年間226日もの断流日数を記録したことは有名ですが、北部の主要河川(黄河、遼河、海河)全体を見ても、1年間のうち5〜8か月間は枯渇していて、国内全体の流水量の7.5%(1993年値)しか有していません。それにもかかわらず、北部は、国内の小麦の67%、とうもろこしの44%の生産を担っていて、加えて、北京や天津等の政治及び経済面で重要都市が位置し、工業用水や都市用水の需要も加速度的に高まっています。これらの状況から、北部の水不足は、中国全体の経済停滞や食糧供給逼迫等の深刻な問題を引き起こす可能性が高いと言われています。
また、水資源の不足には、水の浪費という状況が拍車をかけています。農業部門では、老朽化した設備を使用していること等により、灌漑効率はわずか30〜40%と、先進国の70〜90%の半分以下で、さらに、都市用水では、北京や天津等の一部都市を除き、水再利用率は30〜50%にとどまっています。これも先進国の75%以上と比べてかなり低いです。 地下水も中国全土にわたって水位の減少が見られ、特に華北、華東、東北地域など工業化が急速に進んだ人口密集地域で汚染が急速に進んでいる。東海・渤海の沿岸地域の海水汚染は、特に上海市、浙江省、江蘇省、天津市の沿海部で深刻な影響をもたらしており、窒素やリン、油類の顕著な増加で赤潮発生回数が増え、漁業への影響が心配されている。
排水の量も近年の急速な経済成長と都市化の進展により増加の一途をたどっています。排水は工業排水と生活排水に分けられますが、2003年度には生活排水の増加率が工業排水の2倍以上になっています。さらに水質汚染の源となるCOD(水中に含まれる有機物の量)を見ても、工業排水によるものが2000年以降減少する一方で、生活排水によるものは2003年に前年から5%の増加を見ています。都市生活の高度化によって生活排水が次第に水の汚染源と化し、着実にその比重を高めてきていると言えます。
また、南北の地域的なバランスが悪く、それも原因の1つになっていると思われます。南は雨が多く、北は降水量が少ないのです。長江では毎年のように洪水が発生するのですが、黄河では河口まで水の届かない「断流」が1970年代以降しばしば繰り返されています。この問題を改善するために、「南水北調」という計画してきました。
東ルートは長江下流の江蘇省揚州から、北京以上に水不足の激しい天津に水を送るものです。中央ルートは長江支流の漢江にかかる丹江口ダムを嵩上げし、そこから北京と天津に運ぶものです。西ルートは長江と黄河の上流でその支流同士をつなぎ、長江流域の水を黄河に流そうとするもので、他のルートに比べて効果に及ぶ範囲が広いです。中央ルートの着工はすでに始まっていますが、開通は早くても2010年でオリンピックには間に合いません。[v]
以上のように、中国では、水質汚濁や水の浪費が悪化しており、これらを背景として、水不足も深刻化する等、水問題に起因する経済や国民生活への悪影響が懸念されています。
中国では、経済成長に伴って、環境汚染や自然災害等が大きな問題となってきました。環境保護政策等は整備されているものの、効果的な取り締まりの実施等、解決しなければならない問題が数多く存在します。また、環境問題と経済成長をどのように調和させていくかという点が、中国にとって非常に大きな課題であり、国家環境保護総局の祝光耀副局長の「環境を整備しながら、破壊も行われている。整備が破壊のスピードに追いつかないことが、現在の深刻な状況の主要な原因だ。」との発言。この問題に関し、非常に難しい舵取りを迫られていることを物語っています。環境問題の改善に向けてより一層の努力が求められています。
第2-1-130表 主要河川の水質比率
第2-1-131図 廃水排出量の推移
(W)その他の問題・報告
@急速で高い経済成長
中国は今や「世界の工場」から進んで「世界の市場」と言われるまでになっています。経済と環境の調和のとれた持続可能な発展を目指すことが中央政府の目的でしたが、地場企業を中心として、コストがかかる環境対策には二の足を踏んでいること、地方では経済発展が優先で必ずしも中央政府の指導が守られていないこと、地域格差が顕著で都市対農村、沿海部対内陸部という構図などにより、汚染対策がなかなか行われにくい状況となっています。
Aごみ・騒音・砂漠化
固形工業廃棄物の総発生量は2000年から増加しており、2003年には前年から6.3%増加して10億トンを超えました。一方、同年の生活ごみの収集・処理能力は前年比8.8%増とはいえ、1億4900万トンしかありません。今後、都市の拡大につれて、生活ごみによる環境負荷が大きくなるものと見られます。
また、最近は都市部を中心として自動車の普及が進み、自動車騒音が大きな問題となりつつあります。政府が行った調査では、全国401のモニタリング都市のうち、21%にあたる84都市が問題ありとされており、昼間の騒音が70デシベルを超える重度騒音に指定された都市も13(3.2%)含まれています。
中国では森林や草地の砂漠化も進んでいる国の1人当たり森林面積は0.13ヘクタールと、世界平均の2割程度しかありません。草地は国土の40%を占めますが、1人当たりにすると0.33ヘクタールに過ぎず、世界平均の約半分しかないという状況になっています。
B人口問題
人口が13億人を突破した中国は、今後、生活の向上と連動して生活汚染物(水や固形廃棄物)の増加とその回収が大きな課題となることが予想されます。この面で、豊富な経験を持つ日本が技術・設備の提供を行い、管理ノウハウを提供して効果的な都市の環境問題の解決に協力することができます。
C環境白書を発表
中国の国家環境保護総局は2006年6月5日、10年ぶりに「環境保護白書」を発表しました。記者会見した祝光耀副局長は「中国の環境問題は依然深刻だ。新たな汚染も次々と生じている」と述べ、10年間の環境保護政策にもかかわらず、なお深刻な汚染が続いていることを認めました。
白書は全国の工業廃水や排出ガスについて、国内総生産(GDP)1単位当たりの減少率を強調しましたが、総量の増加には言及しませんでした。その上で、10年間の環境政策による成果を強調、北京市の大気汚染の改善、渤海の水質汚染や内陸部の砂漠化に一定の歯止めがかかったことなどをアピールしました。
D農地の10%以上が汚染
【北京18日共同】中国国家環境保護総局は、同国の土壌汚染状況の調査結果を発表。全国の農地の10%以上に当たる約12万3000平方キロが汚水や廃棄物などによって汚染され、汚染面積はさらに拡大傾向にあることが明らかになりました。中国の華僑向け通信社、中国新聞社が伝えました。
汚染農地の面積は、北海道と九州を合わせた面積よりも大きいのです。
調査結果によると、毎年生産される食糧のうち1200万トンが金属汚染されており、廃棄せざるを得ないために生じる経済的損失は200億元(約2900億円)に達するといわれています。
周生賢局長は農地の汚染について「農業の持続的発展にとって大きな脅威」と指摘し、人体や生態系に対する悪影響を引き起こしかねないことに危機感を表明しました。
(X)2006年【中国】南=台風、北=干魃 今年は天災の年
今年の中国は天災続きのようです。台風が連続して上陸、南部を中心に大雨による洪水が発生し、交通が寸断されました。その一方で、北部では干魃が深刻化し、天候による災害が広がっています。
新華社電によると、今年度の中国地理学会の学術総会に出席した中国気象局の秦大河局長は、記者の取材を受けた際、今年前半の自然災害の状況について詳細に説明しました。
秦局長は、「今年は自然災害が多い。発生した地域が偏っており、規模、被害がともに大きいのが特徴だ」とし、なかでも台風による被害が1997年以来、最も深刻になっていると強調しました。
今年、自然災害が多いのは、地球温暖化を背景にした異常気象が原因だといいます。
中国を取り巻く気象状況は、東アジアモンスーン(季節風)が活発で、西に偏った亜熱帯低気圧が強いため、中国大陸に湿った空気が流れ込み、台風の上陸を後押ししています。
秦局長は、「歴史的に見ると、今年の被害状況は特別に大きいものではなく、過去の大規模な被害に比べれば小さいとも言える」と指摘しましたが、歴史的に、中国東南部の沿海地域は台風の襲来が多く、今年は上陸した台風の数が多いうえ、勢力も強いため、破壊力も増大しています。一部の台風は進路が複雑な動きをみせており、対策を難しくしています。
中国では50年に1度の台風被害や、60年ぶりの大干魃に見舞われた地域では、今年の気象について恐怖感が募っています。被害の大きさがそれを増幅しているのです。
今月11日、台風が上陸した浙江省瑞安市では、ひざまで水に浸かった住民が自ら救援活動を行っている姿が中国中央テレビなどで伝えられました。
秦局長が、「特別に災害が多い年ではなく、全国的にみれば被害も極端に大きいわけではない」と強調しても、被災地の住民や国民はなかなか納得できないでいます。
中国民政省の統計では、今年これまでに発生した台風や干魃など自然災害がもたらした経済的損失は、2001年以降の同期の平均水準と同じだとしています。
被害が格段に大きいという印象を与えている理由は、台風を例にとると、気象当局の予報能力が向上し、警報や注意報を即時に予想進路にある地方に早め早めに出すため、不安感をあおるという「副次効果」ももたらしていると分析します。
台風の動きや被害状況が携帯電話で伝えられることで、口コミで「台風被害は深刻だ」という情報が独り歩きしていることも大きな要因とされます。
また地方政府が、災害の規模や被災者、死亡者数について積極的に公開せず、透明性が低いことが、住民の不信感や不安感を強めているのです。
地方政府は、被災者数が多くなれば、住民に危機管理能力がないと批判されることを恐れているようです。
しかし、あいまいな情報は根拠のない流言飛語にもつながります。自然災害に関する情報開示を世論は求めているが、中央政府以上に保守的な地方政府にとっては透明性の向上は難しい課題で、隠蔽体質の脱却は一朝一夕にはできないようです。
健康被害の懸念
中国の環境/水問題 深刻な格差 北は慢性的不足 南では洪水頻発
中国では「北部は水が足りず、水が豊富な南部では洪水が頻発」という 「水問題 」が深刻です。
北京は慢性的な水不足に悩みます。04年は17億トンの水需要に対して6億トン不足しました。地下水位は下がり続けています。年間降水量は最近、430_(日本の平均は1700_)ぼどです。黄河に限らず、川は流れが途切れる 「断流」 だらけなのです。
一方、中国の水資源の80%が集中する南部では、98年の長江大洪水など水害が頻発しています。その対策として「退耕遺林」計画が進んでいます。過度の耕地開発が山の保水力を落としたと反等し、斜面の耕地に木を植えて山に戻すのです。
一気に押し寄せる汚染 コスト嫌って対策進まず SO2 再び増加
太陽おぼろ 排水の滝
大気汚染、水質汚濁、酸性雨−中国では、先進国が数十年の時間をかけて経験した環境問題が一気に押し寄せています。中国政府は汚染防止に躍起だが、最重要課題の二酸化硫黄(SO2)が再び増加に転じるなど状況悪化を制御しきれていません。
中国環境保護総局は、「10年までにSO2の10%削減を目指す」との方針を公表しました。05年までの5年間でも「10%削減」の目標を掲げたのですが、逆に28%も増え約2550万トンになりました。現在の排出量は日本(約80万トン)の30倍です。
水質汚染も深刻で、中国の環境NGOが四川省の長江を調査した際、製紙工場から長江に無処理の廃水が落ちていました。「まさに黒い滝だった」といいます。しかし、工場長は「処理のお金はないと。従業員2千人、家族も含めれば1万人を支えている工場を閉鎖できない」と開き直りました。
政府は、工場による環境汚染の立証責任を被害者側に求めるのを改めて被害者側にたった法律にするなど、裁量で左石される行政を変える法整備を急いでいます。
ただ、中国では中央の法律や方針は、しばしば地方で骨抜きにされてきました。環境発展研究所の曲格平教授は「地方官吏は、経済発展への貢献で評価されてきました。今年から業績査定に環境項目を大きく入れた。これで変わるだろう」といいます。
長江の中流に今年5月20日、世界最大規模の多目的ダムである三峡ダムが完成しました。全長2309m、高さ185m、総工費約2兆6600億円。着工から12年でやっと完成しました。数百の都市が水没し、140万人が移住した大事業となったのです。この建設は李鵬元首相が進めたものだが、ダム建設による生態への影響や堆積する泥の問題など、やはり環境破壊につながるであろうものも多くあります。
(Y)中国の大気汚染が日本を襲う?!
中国では大気汚染によって年間40万人が命を落としている――そんなショッキングなニュースが流れたのは昨年初冬のことです。この数字は中国の全人口の0.4%に当たり、日本における自動車乗車中の自動車事故死亡率とほぼ同率です。大気汚染は当該国および隣接国のみならず、地球規模で影響が現れることが最近の研究で明らかになっているのです。
日本はアジアの最も東側に位置し、冬季から春季、すなわち中国大陸の各都市で最も大気汚染が深刻になる時期、北西季節風により中国大陸の風下となります。ガスと微小粒子は長距離輸送されやすく、大気中を数日から一週間程度さまよい中国から日本へと移動します。微小粒子は、直径が小さいため、吸い込むと肺にまで到達し、健康被害をもたらすことがあります。アメリカの疫学調査によると、微小粒子の濃度が増加すると使者が増えるそうです。[vi]
◆植生に大きく影響するオゾンが日本でも増加◆
日本では、気象庁や環境庁の観測結果から、過去10年間ほどで大気中のオゾンが約2割増えていることが分かっています。原因として、中国や韓国など東アジアの産業活動で発生した窒素酸化物からオゾンが生成され日本に流れてきたとする見方がありますが、定量的な評価は十分にはなされておらず、はっきりと分かっていないというのが現状です。
オゾンは植物の成長を阻害したり、森林を枯れさせたり、農作物の収量が落ちたりといった問題を引き起こします。また、酸化力が強いため、人間の呼吸器にも悪影響を及ぼします。
日本では、気象庁や環境庁の観測結果から、過去10年間ほどで大気中のオゾンが約2割増えていることが分かっています。原因として、中国や韓国など東アジアの産業活動で発生した窒素酸化物からオゾンが生成され日本に流れてきたとする見方がありますが、定量的な評価は十分にはなされておらず、はっきりと分かっていないというのが現状です。
隠蔽体質の中国もついに、隠しきれなくなったのでしょう。情報元は中国紙・中国青年報のようですが、今後このような報道がポロポロ出てくるでしょう。
およそ人が住んでいるところでは美しい所はほとんどありません。観光地でも目に見える場所もきれいとは言えませんでした。見える部分がこれだけ汚いですから、目に見えない水質、土壌、大気汚染の実態など想像するに寒気がしてきます。公害病がいまさら報道されても驚きもしません。むしろ、報道が遅すぎる事を驚くくらいです。中国人は仕方ないとして、中国に仕事で駐在されている方が知らぬうちに健康を犯されないことを祈るばかりです。
汚染の進行は、中共が一党独裁を続け、無理な経済成長を続ける限りは改善など期待できないでしょう。チェック機能が働かないのです。中国のマスコミは中共に逆らえませんし、官僚は国民の方に向いて仕事をしているのかどうかも分からない状態ですので、何も期待できる材料がありません。何も知らない国民が、バタバタと倒れては闇に葬られことになれば、気の毒な限りです。そういう政府を許している報いとも言えます。中共は一度も民意を問うたことは無かったのでしょう。大東亜戦争のドサクサに紛れて、日本軍を引きずり込んで利用し、武器をもって大陸を制圧したタダの軍閥でした。救いようが無いです。
環境汚染は次第に周辺国へも影響していくことですから、日本への影響もいずれ深刻状態になる可能性があります。日本は日本国内、周辺国などと連携して独自にデータを収集して実態を国際的に周知する必要がありますし、毅然として環境保護対策を求めていくことが必要と思います。
ここで、心配なのは日本の国益をきちんと踏まえた対応が出来るかどうかです。今のヘタレ外交なら、中国の言うがままに環境保全技術を無償援助などしてしまいそうで、危なくて見てられません。挙句の果てに技術をパクられてしまい、模倣された質の悪い技術が、別の国でトラブルを起こすのは目に見えるようです。日本の国益どころか、第3国にも大いに迷惑をかけることになりかねません。中国に腰が引けている外務省、親中派と呼ばれる議員、経済人の売国的行為については大いに警戒しておかないといけません。
日本は、高度経済成長時に公害を出して、非常な苦しみを味わいました。しかし、その苦しい中からレベルの高い環境保全技術を作り上げてきました。その技術は、今後の中国にとっては喉から手が出るほど欲しくなるに違いありません。これは、いわば巨大なビジネスチャンスであると共に、強力な外交カードになります。この技術をブラックボックス化し、キーコンポーネントは国内に留めておくことでパクリを防止するなどして、更に技術に磨きをかけて、その技術を用いる限りは、常に日本側に利益が流れ込んでいく仕組みを作るべきであると切に思います。そのためには、戦略的な考え方が必要であり、先手を取っていかないといけません。
(Z)今後の展望−日本に大きな協力の可能性
すでに述べたように急速な経済発展により、中国では主要な環境汚染源が工業分野だけでなく、都市地域の個人の生活にまで拡大移行しつつあり、中国政府も環境政策の転換を迫られています。汚染物質の排出量の濃度・総量規制だけでなく、汚染物質の排出そのものに対して料金の徴収を図り、超過量に対しては追徴金の徴収を行い、違反者には罰金を課するといった規制強化も試みられています。
しかし、中国の国土は日本の25倍の面積を有しており、自然環境や産業構造などが地域により異なり、中央政府の法や制度の画一的な適用は必ずしも適切ではありません。したがって、地方政府に権限を与え、地域の実情にあった法律・規則の制定を認める形での環境保護対策を進めざるを得なくなっています。ここに中国の環境問題の難しさがあるのです。
このような中国の現状に対し、環境対策、環境保護に関するノウハウや資金を提供できる日本の役割は大きいと思われます。すでに政府系銀行や国際協力機関、さらには地方自治体やNGO が中国への支援を行っていますが、各種技術ノウハウや設備の導入は日本企業の環境ビジネスを活性化する要因ともなるため、積極的な支援活動が望まれます。中国では自動車販売の急増で排気ガス放出の問題が顕在化していますが、この面でも、日本が持つ高度な脱硫・脱硝技術や自動車関連環境技術を利用することができます。下水やごみ排出による環境汚染、産業汚水・COD排出などへの対策に対しても同様です。
京都議定書には、国際協調で排出削減を達成するため、京都メカニズムと呼ぶ制度が導入されています。その中に「クリーン開発メカニズム(CDM―Clean Development Mechanism)」がありますが、これは温室効果ガス削減数値目標を達成する手段のひとつとして認められたシステムで、他の国で行った温室効果ガスの削減・抑制対策による温室効果ガスの削減量をクレジットとして得て、自国の削減目標に充当できるシステムのことです。例えば、日本が中国の二酸化炭素を削減するための技術援助をしたり、森林を育てたりすることも削減数値にカウントできることになります。この制度を利用して、日本が中国に環境問題全般にわたり協力することも可能です。
中国の環境汚染は中国だけの問題ではなく、その東の地に位置する日本は大気汚染、海洋汚染、黄砂など多方面で影響を受けてしまします。日中両国が協力して中国の環境問題に解決することは日本を救う道に通じるのです。技術、設備、資金、管理ノウハウ、人的交流がさらに両国間で進むことを期待しました。
今まで述べてきたように、中国は汚染レベルの指標が比較的高い水準にあります。公害の深刻化を国民に教え、公害の悲惨さを認識させる啓蒙教育がまず必要とされます。中国人一人ひとりの環境問題解決に協力する必要があるのです。
一部の都市での環境は悪化傾向にあり、世界の過去の事例を教訓として、外国からの環境対策ノウハウの導入・対応のあり方を参考にするとともに、法律の適用の強化、罰則の強化などの施策が必要とされます。
環境汚染と生態破壊は住民の健康にも危害を加えることを、日本の四日市病や水俣病などの事例を紹介して中国国民に周知させ、政府の環境政策へ一層の協力を求める動きが必要とされています。
以上のように、中国の環境問題の解決には中央政府主導の強力なリーダーシップが必要であることは論を待たないのですが、環境問題を政府だけの問題として放置せず、国民一人ひとりの問題として協力を促す必要に迫られています。そのためにはまず、政府が国民に対して環境情報の提供をさらに進め、国民の理解と関心を高めることが必要です。
京都議定書について
この条約は、一言で言えば地球温暖化を防止する国際条約です。1997年12月、京都で開催された「地球温暖化防止京都会議(COP3)」では、先進国から排出される温室ガスの具体的な削減数値目標や、その達成方法などを定めた「京都議定書」が合意されました。
T、京都議定書の概要
◆ 先進国の温室ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国毎に設定する。
◆ 国際的に協調して、目標を達成するための仕組みを導入する。
◆ 途上国に対しては、数値目標などの新たな義務は導入しない。
◆ 数値目標
対象ガス 二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFCs、PFCs、SF6
削減基準年 1990年(HFCs、PFCs、SF6については1995年から)
目標達成期間 2008年から2012年
削減目標 先進国全体で5.2%削減
主要国の温室効果ガス排出削減約束 】
参考:環境省作成資料より
【二酸化炭素(CO2)の国別排出量 】
参考:環境省作成資料より
日本における2000年度の温室効果ガスの総排出量は約13億3,000万トンで、基準年の1990年では約12億3,000万トン。これに京都議定書で定められた削減目標の6%をあてはめると、ほぼ10 年間で2億トン近くの削減が課せられていることになります。ところが、 先頃発表された2002年の総排出量は約13億3,100万トン。前年2001年の減少から再び増加に転じ、今後も消費エネルギーの増大に伴う増加が予測されていることから、新たな規制が検討されはじめています。
【日本における温室効果ガス排出量の状況と削減目標 】
京都議定書会議:温室ガス削減 中国も「08年協議」同意
京都議定書第2回締約国会議(COP/MOP2)は17日(日本時間18日未明)、途上国を含めた13年以降の温室効果ガス削減の取り組みを、08年冬の京都議定書第4回締約国会議(COP/MOP4)で協議することを明記した会議報告書を採択し、閉幕した。次回の会議は07年12月にインドネシアで開かれます。
最大の課題だった途上国の取り組みを合意に導くことができましたが、経済への悪影響を嫌う途上国に配慮し、具体的な内容の協議は来年以降に先送りしました。今後、世界第2位の温室効果ガス排出大国・中国などを実効性のある取り組みに巻き込めるかが課題となります。
作業手順は、途上国を含めた温室効果ガス削減のための取り組みをどのような内容で進めるかなどを、各国が意見書にまとめて07年8月までに提出。08年の会議で具体的な取り組みについて話し合います。
中国など途上国は今回の会議で議論を打ち切るよう主張しでおり、毎年開かれる会議での話し合いを求める先進国と対立していました。議長国のケニアは途上国の主張に配慮。話し合いの時期を08年のみ示して具体的な削減義務に踏み込まない妥協案を提案し、中国を含む途上国の同意を取り付けたまし。
京都議定書は、先進国が08〜12年に負う温室効果ガスの削減義務を取り決めていますが、途上国に関しては特に定めていません。ちなみに日本は8%削減を求められていますが、現実は程遠く、むしろ年々増加傾向にあります。
京都議定書第2回締約国会議は、13年以降に空白期間を作ることなく新たな枠組みが継続する余地を残しました。特に、話し合いの打ち切りを主張してきた中国やインドを交渉の場にとどめた点が評価できます。しかし、合意を優先して具体的な削減策の策定を先送りしており、今後も途上国の反発による議論押し戻しの可能性があります。
排出大国の中国やインドをはじめ、途上国に温室効果ガスの削減を促すことは05年の第1回会議以降の重要な課題の一つです。特に中国は経済成長に伴い、1年ごとに東京電力1に匹敵する温室効果ガスの排出増加があり、09年には米国を抜いて世界一の排出大国に躍り出ます。今回限りで議論を打ち切るよう強く主張し、そのたびに会議が空転しました。しかし、徐々に孤立した末に態度を軟化させました。
一方、もう一つの排出大国である米国との対話は、今回の会議でも不十分なままでした。
日本政府が交渉に果たした役割は大きいです。17日の非公式協議では、合意を急ぐあまり、途上国に削減義務を課さないことを明記する提案がなされました。しかし「途上国にも先進国と共通の責任はある」と主張、今回の結論につなげました。
([)政府の対応策
日本をはじめとした先進国は、その工業発展の中で諸々の環境汚染の問題に直面しましたが、一方で中国はこれに注目して、今を遡ること20年以上前の1973年に全国環境保護会議を初めて開催しています。その後の法案制定・改正を中心とした政府の主要な取り組みは以下のとおりです。
1984年5月
「水質汚染防止改善法」制定(1996年改正)
1987年9月
「大気汚染防止改善法」制定(1995年、2000年に改正)
1988年
「国家環境保護局を国務院の直属機関に昇格)
1989年12月
「環境保護法」を制定
1992年
ブラジルでの地球サミット(国連環境開発会議)に当時の李鵬首相が出席、中国が本格的に国際的な環境政策に歩調を合わせる契機に。
1994年3月
「中国アジェンダ21」を作成、2000年までに国内で取り組むべき計画と行動内容を規定。中国の持続的発展は環境保全が前提になるとの認識が国の政策の中に盛り込まれた画期的指針。
2001年12月
「国家環境保護十五計画」発表
2002年6月
「クリーン生産促進法」発布。環境汚染の発生の源で汚染を制御・削減する。グリーン調達開始の契機に。
2004年
「清潔生産審査暫定弁法」施行。企業に環境負荷の少ない生産方法を採用することを促す。
同
「固体廃棄物環境汚染防止対策法」(リサイクル促進法)改定。
この3月5日開幕した中国第十期全国人民代表大会第三回会議で、温家宝首相はエネルギー資源の節約と資源の利用効率を高め、廃棄物を再利用する循環型経済を発展させて環境保護を強化する方針を表明しました。
(\)最後に
1990年代までは、主要なエネルギー源・石炭の燃焼が最も大きな大気汚染源でした。しかし近年、ボイラー等への脱硫装置の設置、低硫黄炭の使用、排汚費の徴収、市内での石炭使用禁止、天然ガス等へのエネルギー転換などにより、石炭燃焼由来の大気汚染は改善される傾向にあります。一方、石炭燃焼排出物に変わる環境汚染源として、化学物質に注目しなければなりません。中国の化学産業は指数関数的な成長を見せています。「衣」を支える化学繊維、「食」を産する化学肥料や農薬、「住」に関するプラスチック製品の生産量は、急激な増加を示しており、中国も物質的に非常に豊かになってきました。これらの化学製品の製造、使用、流通、廃棄の過程において多くの化学物質が環境に排出なれます。しかし、これが危険だからといってすべてを中止するわけにはいかないのです。化学物質の利便性を享受しながら、環境や生命への影響を回避しなければなりません。国民自身が化学物質の危険度を知り、その優先順位を決めていくべきです。[vii]
私はこの問題は奥が深いと思っています。中国の環境が日本を含むアジア地域全体の問題でもあるのです。中国の環境問題への協力は中国自身の環境問題の解決に寄与するとともに、中国が解決のノウハウを修得したとき、中国自身がアジアや地球全体の環境改善への国際協力に関与することを促す可能性を持っています。中国の環境のことをもっともっと知っておくべきだと思います。今度中国に行く機会があったら、現地で環境問題の深刻さをもっと勉強して帰ってきたいと思いました。
参考文献
@2006同友社 原 剛編著 『中国は持続可能な社会か』
A2005蒼蒼社 中国環境問題研究会 『中国環境ハンドブック』
B2000文芸社 北川 秀樹著 『病める巨龍・中国』
C2004慶應義塾大学出版会株式会社 橋本 芳一他著 『中国の空 日本の森』
D2005築地書館株式会社 E.エコノミー著 『中国環境リポート』
E2000岩波書店 定方 正毅著 『中国で環境問題にとりくむ』
F2006石油文化社 武石 礼司著 『アジアの産業発展と環境』
G2000慶應義塾大学出版会株式会社 小島 朋之編 『中国の環境問題』
H2005株式会社晃洋書房 竹歳 一紀著 『中国の環境政策』
http://www.smrj.go.jp/keiei/kakurepo/kaigai/backnumber/005217.html
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/interview/45/02.html
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2005/2005honbun/html/H2137000.html
http://wwwglass-fiber.net/kankyo/kankyo2.html
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[i] Fの『アジアの産業発展と環境』p21
[ii] Bの『病める巨龍・中国』p51
[iii] Eの『中国で環境問題にとりくむ』p76
[iv] http://news.searchina.ne.jp 2006年11月30日ニュース
[v] Aの『中国環境ハンドブック』p83
[vi] Cの『中国の空 日本の森』p140
[vii] Cの『中国の空 日本の森』p157
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