郭春葉卒論
目 次
はじがき
第1章労働者の立場
第1節労働者の収入と福利及び定着率の比較
第2節労動者から観た外資企業の経営方式
第2章 企業の立場
第1節中国人労動者の提案と日系企業の労務管理の改善
第2節 知名の日系企業の経験
あとがき
参考文献
はじめに
中国は1978年改革開放以来、経済が発展し、1992年以後、中国経済の高成長と改革開放の深化を背景に、諸外国の対中投資は拡大を見せてきた。安い労働力や豊かな資源及び13億人の大市場を狙って、中国に進出した多国籍企業が多くなってきた。その中で、中国外資企業の両方の大きい“陣営”として、日本企業と欧米企業がある。
中国の外資企業は現地化は避けて通れない課題であり、「現地化」は中国投資成功のキーワードになるともいえる。特に、人の現地化を通じて、現地社員のやる気を引き出すことが大事だと思う。
「現地化」というのは、進出先の経営資源を活用し、進出企業の内部経営活動に取り入れることである。具体的に経営資源とは、ヒト、モノ、カネ、そして情報の4つである。このため、中国人を活用する機会を増やし、どう活用するかがおおきな課題となっている。
また、中国人の労働者はどんな企業に働きたいのか。外資企業には、日本企業と欧米企業は「領袖」であり、外資企業に働きなら、この二つ企業に志願である。中国人の場合は一般的に日本企業より欧米企業のほうが良いと思う人が多いだろう。なぜならば、欧米企業には、給料が高くて、個人の発揮の空間も広い。一方、日本企業には、給料が低くて、残業も多い、そして個人の発揮の空間も狭い。具体的に中国人はどう活用するのか。中国人の労働者にとっては、日本企業と欧米企業がどちら働くと良いのか。様々な質問を持って、日本企業を欧米企業と比較しながら、中国人の労働者の意識について、研究した。
第1章労働者の立場
第1節労働者の収入と福利及び定着率の比較
外資企業の輪の中で、給料は敏感な話題であり、この研究は大変難しい。そんな中中国において、外資企業の両方の大きい“陣営”として、日本の企業と欧米企業がある。福利上での給料の相違は明らかであり、これは求職者の多くに興味を持たせる話題である。
このために、私は上海交通大学の企業コンサルティング有限会社が最近発表した《2004-2005年の間の外国の企業の給料や福利の調査研究報告》と《2004年度の外国投資企業(欧米)の給料と福利の調査研究報告》の中を検索してつぎの事実を得た。
絶対に受け取る金額の上から見て、欧米企業ははるかに日本の企業の上を行く。データは明らかに、欧米企業の従業員の給料の平均的水準はあまねく日本の企業より高くて、それが昇進に従って、開きはいっそう大きくなる。
日本企業と欧米企業の普通の従業員の給料では、日本企業の従業員の平均の年収は1.6万元で、欧米企業の労働者の平均年収は2万元である。日本企業の普通の従業員の年収はおよそ3.2万元であるが、欧米企業は4.5万元まで達することができて、日本企業に比べて欧米企業の従業員の収入は40%多い。職務の上昇に従って、両者の間の開きはますます大きくなっていく。日本企業と欧米企業の主管者の収入を比較すると5.8万元と8万元で、マネージャー以上の職位の中で比較すると日本企業のマネージャーの平均の年収は12万で、欧米企業のマネージャーの平均年収は23万元に達することができて、開きは2倍ぐらいまで開いた。
なぜこのような開きを生むか。主な理由は両者の中の投資産業の分野は一緒ではなく、華東地域で投資する日本企業は主に電子あるいは機械製造業に集中して、中国を彼らの生産基地にすることに傾いて、多くの会社は中国で技術や新商品の開発部門を設立していない。そのため、現在人材に対して、要求はあまり高くないだけでなくて、甚だしきに至っては仕事を操作しさえすれば専門の技能を必要とせず、普通の従業員は企業の要求と企業文化に合いさえすれば十分である。
欧米企業は当地区に足を踏み入れる場合多元化している、その中にはいくつか収益率のわりに高いサービス業を含んで、その他の業界の企業も中国での投資を重視して、次から次へ地区の本部を華東地域に設置する。周りのものの向上につれて自分も向上して、欧米企業の従業員が日本企業より高いことをもたらした。それ以外に、欧米企業は巨大な商業の競争のプレッシャーに耐えて、更に高給のエキサイティングな従業員、特に高級な管理者を使うことに傾く。
日本企業で職位の向上する機会に直面するのは、すべて欧米企業より小さい。しかし労働者が日本企業を理解するならば、日本企業を望むことができて、従業員の待遇は年々少しずつ増加するが、増加の幅はそんなに大きくなくて、従業員の報酬はどうしても低い、しかし一定の年限と職務をやり遂げる場合、例えば日本企業で5-10年働けば普通は簡単に人員を削減することはできなく、人員削減を会社の恥辱と見なして、会社員を家族同様に対応する。もしあなたが若干の期間働いてまだ十分な技術力がないと、企業はこれを企業の責任だと見なす。これは欧米企業ととても異なるところである、欧米企業は今のあなたの能力に支給するのであり、明日のあなたの業績について言っていないので、あなたを首にする。ただ、今の若い人は将来を考えることなく、目の前だけを見て、あなたは今日の私にいくら払えるかと言う。こうした情況の下で、日本企業の競争力は大きくない。
企業の福利は主に教育訓練、休暇制度、そして住宅の供給保障の3つの方面から構成(賞金、手当などの現金支給額がすべて現金収入と見なす)されるが、ここでも、欧米企業の従業員の待遇は日本の企業の従業員より高い。
従業員の教育訓練については、欧米企業は明らかに気前がよい。現在の状況を調査して見ると、欧米企業が管理者、専門技術者と普通の従業員の各1人の毎年の教育訓練に支出する額はそれぞれ3000元、2000元と800元で、日本の企業は2000元、800元と200元である。
住宅の福利については、日本企業と欧米企業は大きい区別がない。一部、例えば、保障制度では日本企業がよい。住宅の手当については、日本企業と欧米企業を比較的すると、両者はそれぞれ35.3%と31.6%を占める。また、15.8%は欧米企業に住宅の貸付けを望む一方日本企業では17.6%である。
その上欧米企業との大きいな違いは日本企業の目的が仕事の安定にあって、従業員に対する要求は高くない。大きな誤りを犯しさえしなければ、日本企業は簡単に従業員を解雇しないので、日本企業の従業員の定着率は非常に高くて、大体80%である。欧米企業では、従業員はいつでも“首にされる”危険の防備に用心しなければならなくて、従業員の中に自主退職する従業員は50%ほどいる。
関連機関の《日本企業の給料と福利の調査研究報告》によって明らかに示されたことは、日本企業進出はその独特な経営と管理パターンを通して、大量の国内の人材を引きつけた。その中には、プラント、機械製造、耐久消費財の生産企業が多数を占める。製造、技術、品質保証など日本企業の最も重要な部門に大量の国内の管理と技術の人材を採用して配属した。
日本企業は進出後も、多数は依然として日本の管理パターンを採用して、“集団”の作用を強調して、“個性”の発展を強調しない。日本企業は各種の福利の進歩を重視しないで、基本は国家の社会保障の部門に任せて、その他の福利について制定、実施する。その他に、各部門の部長(欧米企業の部門の総監督に相当する)は日本人従業員が、上級の職務を行い、甚だしきに至っては課長(欧米企業の部門のマネージャーに相当する)職務はすべて日本人の従業員が担当するのである。日本企業が支払う給料もあまねく欧米企業より低い。日本企業は普遍的な採用原則によって年功序列賃金制度を実施している。
こうなると優秀な人材はどうしても日本企業で働きたくない?という。彼らはとてもよい人間関係、管理経験、教育の背景をもち言語能力もすばらしい。なぜ日本企業で就職を希望したくないのか、主要な原因は日本の企業文化と“日本式方法”に慣れないことにある.
日本式方法とは何か?日本企業の中国人労動者は日本式方法に対して、どう思っているか?以下のように総括される。
1、日系企業は並ぶことを待望して従業員が空間を発展するのが小さいことを招く。
日本企業の“階層が厳重だ”は聞くところによると世界共通のようである。ほとんどすべて日本企業では“資歴によって世代に並ぶ”傾向はある程度は望ましい。その上日本企業が待望するのは中国側の従業員だけではなくて、日本側の従業員にしても、日本企業は比較的に資歴によって世代に並ぶことを重視する。”
2、日系企業の中国人従業員はどうしていつも助手になるのか。
中間層を占有し管理する職務の中国の従業員は欧米企業の中でたいして違わないが、日本企業では、中国の従業員の最高の職務は副職的である。
かつてある日勤務10年の1人の女性が本紙記者の取材を受けている時不平をこぼした:“私は本当にぼうっとし続けることができなかったと感じる!” “私の大学の専門は日本語で、だから卒業した後に日本企業に行って、いくつか業績を残すことができることを望んだ。でも、私は離れることを選んだ。一人の忍耐には限度があったのだ。今私はM BAを取得して、悪い環境境を変えたい。たとえば、従業員の中に先輩 (古い従業員)と後輩(新しい従業員)を分けることがあって、後輩は無条件に命令に従う。更にたとえば、同様な仕事でも日本人は中国人の報酬に比べて少なくとも1/3高い。中国人は各地に派遣され、半年に一回家に帰ることを許されるか、日本人は中国に来て働いて、自家に帰るときは、会社はそのすべての費用を負担するという。これには道理がなく、とても不公平だ。欧米企業は更になぜ中国の従業員を引きつけるのか。それは従業員に多くの機会を提供する。もし従業員にとても大きい発展の空間があるならばその能力を発揮ことができるからである。調査によると、とても多くの優秀な人材が日本企業を離れるのは“不公平なため”“空間を発展する余地があまりに小さい”と感じるためである。
3、経験の重さ、軽い能力
日本企業の管理パターンは大部分がマニュアル化され、すべてのことは段取りを踏んで事を進めることができるが。時には能力より経験が更に重要視され、すべての職務上の“大先輩”の経験を基にし、甚だしきに至っては手を取って教えることがある。日本企業で働くのは個性的な従業員より平凡な従業員が評価されやすいし、そうした不満が従業員の創造性を奪いとる。このようなプログラム化の管理パターンは中国の従業員に適応しないのではと感じる。特に自分の見識をもっている人に対する、個人の価値を企業は認めない。日本企業は大部分の仕事を大先輩がどのようにするかを教えて、また問題に出会う時、先輩の経験で問題を解決する方法を判断するため、個性的な革新的な人材はいらない。日本企業で働くことは単調であると言われる。私達から見て、中国進出日本企業はIT企業は珍しく、普通は製造業である。製造業の日本企業では個人の創造性を発揮できない。
4、残業を美化する
日本企業は長い時間会社にいるのがよいと思われ、これは企業に対する従業員の忠誠度を測る尺度に使われたりする。多くの日本企業は残業(時間外労働)があたり前だと考えてきた。そして、それを個人の能力の差と考える傾向もある。どうして残業が多い、また残業しても残業手当を貰えない?これは中国のサラリーマンに理解されにくい。しかし、日本企業で仕事をしている中国人労働者の中には“郷に入れば郷に従う”と言う考え方もある。
残業が多いは日本企業の特徴である。日本のお嫁さんは旦那さんが会社から早く帰ってくる日が続くと不安になると言う。中国人にとっては嬉しい話であるが、日本では違ってくる。日本では旦那さんが会社に不要な人、能力のない人と看做されことになってしまう。
5、日本企業で働いてる中国人労働者を抑える雰囲気を感じる
通常中国の従業員の待遇は日本の従業員に比べると高い。もちろん、両国の消費水準は異なっているが、給料の大幅の差があることは中国人労動者に理解しにくい。日本企業は集団の力を重視し、個人の能力を重視しない。
日本の有名な商社の事務所で働いたことがある馬さんは日本企業が中国の外資企業の中で最も尊敬する企業に落選したのは予想された事であると言った。彼が勤務した商社は1996年世界の500大企業の中で第9位になり、総資産は7000数億ドルで、日本の9大商社の1つである。しかし2001年では、この商社は70番目に下がった。原因はとても多いが、その中の1つの原因は日本企業が個人能力を重視しないことに関係があると思われる。日本企業では普通は一流の人材が本部、二流の人材は欧米に、三流の人材はやっと中国に来ると言う。これは人事問題になってくるだろう。
その他に、重役が人員異動を管理することが多く、彼らの管理の規準は同一でなくて、適応しにくい。日本人が事をする時はとてもまじめで、あまりにも小心翼々として、小さな事に何度も確認し、同僚と相談して、本部と確認して、その後で実行するために、自然に効率は下がることになってしまう。
第2節 労動者から観た外資企業の経営方式
外資企業の労動者が中国に進出している外資企業に対して、その企業がどんな経営方式を採用しているのかはとても関心の高いことである。私は日本企業の中国人管理者の発言を調べた。
彼はある日本企業の副社長であるが、中国に進出している日本企業の経営方式について、こう説明した。
1、戦略の動向の特徴にあわせて、経営する。
新しい市場の開拓は、過去、現在と将来を比較して、割合は恐らく増大していくはずである。本来、経営戦略として、特に重視のプロジェクトは企業のグローバル化である。将来企業のグローバル化はいっそう加速する。世界に進出する同時に、企業のグローバル化の獲得に成功して、それに関心を持ち続けることができるかどうか。
グローバル化によって、国内の景気にもよい影響が現れてつぎの行動を再編する。
現地の企業と共同で生産する。過去の“現地を拠点として生産と販売だけで”から、重点的に“強化してサービスを販売する”、“新しい市場を開拓する”に向かう。
2、人事管理の動向よって、推移する。
中国の現地の企業の待遇について、日本式の人事管理の要素の意図を導入したことがある。今までの低い成長期と比較して、“教育管理”、“目標管理”、“専門職の育成”は人事管理の重点プロジェクトの領域でも高位を占有している。これは重要な変化である。21世紀初めには、“目標管理”はいっそう重要になり、その変化は引き続き関心を持たれている。
3、企業の活力の程度の動向の移転によって、経営する
企業の活力の程度をすべてのプロジェクトの領域の中で向上させる。現在の企業の活力の源は“製品の品質”と“労資の関係”であって、将来的に企業の活力の源となっていくのは“企業のイメージ”、“経営方針”と“人材育成”であろう。過去、活力の程度の比較的低い領域は“情報の共有”と“情報の活用”で、情報は経営の領域で重要性を増すと思っている。今後いっそう重要な目標であることを明らかに示した。また将来、上昇の割合の比較的目立つプロジェクトの領域は“収益性”、“行動管理”と“人材育成”である。
4、親会社のコントロールの程度の動向によって、推移する。
親会社の負担を軽減するために、親会社は時代の状況次第によって権限を現地の子会社に引き渡す。プロジェクトの領域で高い比率を構成するのは“現地の人材を活用する”、“新しい市場を開拓する”と“管理者を教育する”で、現地に権限を譲ることを明確になる。親会社は多方面から海外の子会社に支援を与える。親会社のコントロールの程度のかなり重要度の高いプロジェクトの領域として、“現地の企業と共同する”と“親会社間の人事と交流する”がある。
つぎに、欧米企業の経営方式について、私達が欧米企業の経営の過程を検討するならば、つぎのことを容易に発見することができる。欧米企業は経営の初期で日本企業と同様に漸進式(漸進主義)をとる。
ここで述べている漸進主義とは欧米企業に関して初期の経営の研究である。
1970年代、JohansonとVahlne に代表される北欧学派が、スウェーデン企業の多国籍経営の過程について研究を行った。その結果は企業の国際化の4段階の理論に帰結する:(1)不規則な輸出の活動;(2)代理店を通じて輸出する;(3)海外に子会社を設立し販売する;(4)海外の生産と製造に従事する。彼らは、この4段階は1つの“連続して”、“漸進する”過程だと考えた。1980年代、米国Cavusgil教授は米国企業の研究に基づいて、企業の国際化の経営の5段階の理論を出している:(1)国内のマーケティングの段階。主に国内で生産と販売に従事する;(2)前輸出の段階。国際市場に対して興味を持ち始めて、意識的に情報を集めて市場調査し、不規則な輸出活動が現れる;(3)試験的に巻き込まれる段階。主に間接的な輸出に従事して、小さい規模の国際マーケティングの活動を始める;(4)積極的に投入の段階。直接輸出の方式でその他の国家の輸出製品に対抗;(5)国際戦略の段階、世界市場を座標にして企業の戦略的計画を制定する。
1980年代中期、イギリスの学者G.D.NewbouldとP.J.Buckleyなどはイギリスの43の中小企業の調査研究に基づいて、第5種類の道(国内経営→輸出→海外の代行→海外で販売子会社の設立→海外で生産子会社の設立)を採用するのは最高で、つぎに第4種類の道(国内経営→輸出→海外で販売子会社の設立→海外で生産子会社の設立)、さらに第3種類の道(国内経営→輸出→海外の代行→生産子会社の設立)、第2種類の道(国内経営→輸出→海外で生産子会社の設立)、第1種類の道を採用するのは最低だと結論している。
上述の調査結果を発表して、欧米企業は海外進出の初期で皆漸進する主義をとってモードを拡張するのは日本企業と違うところがない。漸進主義は企業の多国籍経営の初期段階で普遍的な意義を持つのだとすることができる。いわゆる漸進性発展は2つの意味を含む。1つ目は経営の方式の上から、リスクの低い貿易の方式から、1歩1歩リスクの高い投資方式に移行して、買収合併はリスクの最高の投資方式である。2つ目は海外の地域に拡張する上で、経済、カルチャーギャップの小さい国家から、1歩1歩経済、カルチャーギャップの大きい国家あるいは地区に移行<
第2章 企業の立場
第1節中国人労動者の提案と日系企業の労務管理の改善
日系企業が中国の国内業務を拡大することについて、営業・管理部門などで中国人人材を活用する機会を増やし、どう活用するかが大きな課題となっている。優秀な中国人人材をめぐる獲得競争が激化する中、最近の反日デモや労働争議も影響し、日本式人事管理の見直しが急がれる。
ジェトロは2004年4月から2005年3月にかけて、中国における人事戦略について、在中国の日系、欧米系、台湾系、韓国系企業を中心に、日本と中国を合わせて59カ所の企業、団体、大学にヒアリング調査を実施した。ここから得られた結果を基に、中国で人材活用に成功するためのポイントと留意点をとまりまとめてみた。
1、現地化とポスト
各企業の事業展開のステップに合った形で徐徐に現地化を進めていくことが、キャリアアップ志向の強い中国人のモチべーション向上の観点からも重要である。ただ、急激にすべてのポストを現地化するのでなく、マーケテイングなど中国人でなければ務まらないポストを見極め、担当業務に応じた人材を充てることが肝要である。
例えば、すべて日本人管理から要職だけを日本人が押さえる、そして本社採用の中国人社員に任せるようにステップを踏んだ現地化や、経営の現地化を推し進める一方、現地法人を統括する立場の日本人1人だけを配置し、日本本社との連絡、財務部門の統括、トラブル処理などの業務を担わせる、というポジションの見極めを実施している企業があった。
2、人材育成は長期的視野で
現地で幹部候補となる人材を育成する際に、日本人の初代総経理が当地採用の中国人スタッフを5年かけて副総経理にまで育て上げたというように、駐在員が後継者育成を使命とする意識を持ち、育成後は日本に帰国することが必要である。駐在期間中は、次の総経理や幹部を中国人にすることを現地社員に示し、モチベーションを高めることも有効である。欧米、韓国系企業ではこれらを前提として駐在させる傾向にある。
中国では会議は以前は参加者が全員日本人であったが、現在では3分の1が中国人幹部候補であるというように、社内の戦略を決定するミーティングなどに中国人社員を積極的に関与させる方法も広まりつつある。
3、大学内での積極的な企業PR
採用に当たっては、1大学のキャンパスでの説明会の実施、2大学での講義、3奨学金の提供、4インターンシップの実施など、様様な方法で企業イメージを学生にPRしている。
特に、欧米、台湾系企業にはその傾向が強い。大学対応の部署を設置し、優秀な中国人エンジニアを採用するため、北京、上海、西安、成都などにある理工系16大学を採用のターゲットに絞っているところもあり、特定の大学で採用を実施する例もある。中国全土の大学3年生を対象に傘型企業内夏休みの2カ月間、研究開発のインターンジップを実施すると、参加者のうち40〜50%が志願者になるなど優秀な人材を囲い込む策も有効である。奨学金は、企業PRの一環として与え、入社を義務付けないケースが多い。
4、幹部候補としての留学生の活用
中国現地法人の幹部候補として、北海道大学、岡山大学、九州大学などを卒業した中国人を本社採用している。全員が農学や微生物学などの博士号を取得している。2004年本社採用新入社員の約半数が中国人であった。今後は日本で採用した留学生を育成し、現地の責任者として積極的に活用していく意向から本社採用する企業がある。留学生の場合、日本語が話せて日本企業の経営スタイルなどに理解があることが多く、本社との折衝などが多い場合は非常に有効と考えられる。
日本で留学生を採用する際には、留学生の目にとまる媒体を積極的に利用し、留学生新聞への広告掲載、大学での説明会を開催するなど積極的なPRが重要である。留学生教育に熱心な日本の大学を訪問して採用するのも1つの方法である。注意すべき点は、本社採用と現地採用の中国人の待遇面での格差である。現地の中国人から求められた際に、その理由を明確に説明できるようにする必要がある。
5、社内外研修の充実
社内と社外の研修を併用している企業もある。中国人はキャリアアップのためのスキル向上に非常に関心が高い。研修プログラムを社内のOJT(フルマペル)のみならず、経営学修士プログラムへの派遣や外部機関を活用するOFFJT(フルマペル)に対する要望は強い。
例えば、社内の人材育成センターで子会社に研修プログラムを提供し、研修全体の最適化を目指す一般社員のみならず、パート社員にもセミナーを実施し、職位に応じて様様な教育プログラムを用意する。クラブ活動の支援、社内図書館、日本語教室の開設などで従業員の学習のサポートなど多様な研修が提供されている。MBA取得のため学校に派遣する場合は、学位取得後に給与を上げる、昇進させるなどの手当てを考慮しておく必要がある。
欧米系企業では個人のキャリア目標に合わせた年間の研修プログラムを公開し、現地法人、傘型企業、本社などで異なる研修を提供している。また、よりグローバルな視点で経験を積むため、中国人社員を海外のプロジェクトに参加させるケースもある。
日系の中堅企業では、個人が必要なスキルをマトリックスなどで公開し、不足する技術を内部のOFFJT研修でカバーしている例もある。部門長クラスに対して、2003年から外部の講師と協力して社内の日本語研修プログラムを組み、日本人手当を能力により月50〜500元出すというケースもあった。
6、グローバルな人材活用
中国人のキャリア形成にとって、グローバル人材であるという点は強い動機付けになると考えられる。グローバル人材とは世界中または中国広域への異動を前提に本社採用された中国人を指す。本社採用で10年以上働いた後中国に派遣されている中国人が70人以上いる。例えば、傘型会社の副総経理は、日本の大学に留学後、本社でグローバル社員として採用されたり、海外の大学でMBAを修了した中国人人材を、中国国内で働いてもらうために採用しているという企業もある、と言う。
一方、本社採用の中国人スタッフに対しては、現行の人事制度では処遇に無理が生じるとの意見もある。MBA卒など優秀な人材への処遇を十分に与えられるよう本社の制度を改革することが必要となる。
7、透明で公正な人事制度
人事制度については、社内ポストを公「募制にする、毎月の評価内容を公開する」、すべての現場で社員のスキルマップを公表するなど、人事を日本以上にオープンにしている実施例がみられた。今後のキャリア目標を上司との面談で決めて、達成度に見合った処遇を行う、研修でサポートするなどもキャリアの向上を重視する中国人の意欲を高める上で重要であろう。
日本のように、以心伝心の呼吸で通じるという考えは捨てる必要がある。給与の上昇や低下の理由をオープンにし、明確に社員に説明することが求められる。
8、能力主義の導入
日系企業でも5年前に実力主義に転換し、年次に関係なく昇給が可能となった。逆に、年次が上がっても、能力の伸びがなければ給与は頭打ちとなるように、実績に応じた評価制度を採用して成功している事例がある。
欧米系、台湾系企業でも、自己評価の後、同僚、上司の評価,各チームの業績を総合して査定する。全体の20%が優秀、70%が期待に応えた、10%が自己成長が必要という内訳など実績評価制度をとっている企業が大半である。また半年に一度、社員を4階段で評価し、評価の高い社員には研修制度を手厚くし、子会社への出向など経験を積ませる。評価の低い社員には退職や転職を勧めるなど人員の淘汰制を導入している企業もある。
給与については、「当社は他の日系企業や台湾系企業の中では一番の水準を目指し、優秀な人材の確保と維持に努めている」というように、日系企業のみならず、他の外資系企業で競合他社や転職先となる可能性がある企業をもベンチマークとして決定すべきである。
9、キーパーソンの確保
会社が小規模な場合は特に、1人の有能な人間で会社が大きく変わる可能性がある。しかし、日本人トップが帰国した後の経営にはいまだ不安とのコメントもあるように、キーパーソンが抜けた後も維持できる管理体制の構築や後継者の育成が課題となる。
10、日本語教育の重視
社内の公用語を日本語にするなど日本語教育を徹底し、朝礼など日本的習慣を実施することで、会社への忠誠心を高めるとの意見もあった。「中国人社員に日本語手当を高くして、年2回評価、ランク付けする」という企業では、日本語が堪能な一般職は管理職より給与が高い場合がある。こうした方針に適合する人材をコア人材として採用する姿勢をとる企業もある。国内販売時に必要となる営業、企画、設計部門などでは、日本語よりも専門性が高い人材の採用と育成が優先されている。
中国の人事管理に詳しい篠崎正芳氏〈マ−サ社グロ−バル人事戦略コンサルテインク代表〉は中国進出日系企業の人事戦略のポイントについてこう説明した。
1、中国進出日系企業の人材雇用をめぐる現状および問題を聞きたい。
中国の2004年の就職希望先ランキングで日系企業がソニ−、松下の2社しか入っていないように、概して中国人学生から見た日系企業の人気は低い。日系企業が求める優秀な人材と希望する人材の間にミスマッチが起こっているため、必要な人材の採用は非常に激しい状況である。
その上、優秀な人材を採用できたとしても,引き留めることができないことが問題である。優秀な中国人は、日系企業に置けるキャリア発展の可能性や処遇、日本人駐在者とのコミュニケ-ションなどに不満を持ち、自らのキャリア形成場として日系企業があまり適していないと判断するようである。これに対し、日本企業の中国拠点、本社のグローバル人事部門、本社事業部と言う3つの管理組織には危機感が広がっており、中国での人事組織改革に真剣に取り組みはじめている
2、問題が発生した最大の要因
日本式の思考や行動を基にした人事管理をそのまま持ち込んでいることが原因である。例えば、キャリア形成の余地や成長の機会について,不明瞭な場合が多い。日系企業の研究はフルマペルが中心だが、自分の背中をみて学べというような日本流のあいまいなフルマペルは中国人に合わないことが多い。各種のフルマペルを行う目的やその結果どう言うスキルを得る事が期待されているかを、文書で明確に説明して中国人社員とも共有することが必要だ。
また、業務上でさまざまなチャンスを与える機会が少ないため、チャンスを生かす、成果を出す、それが報酬、ボジションにつながるというシステムになっていない。その結果、仕事の業績がよくても悪くてもあまり報酬や昇進の面で差がでないため、能力が高い人材のモチべーションは下がってしまう。
日本人は基本的に終身雇用のため、職を失うリスクは少ない。中国人は契約べースでの雇用のため、契約を打ち切られると職を失いうというリスクを常に抱えながら仕事をしている。自分が仕事からどういうスキルをえられるか非常に敏感であり、将来のキャリア形成の余地の有無を激しい目で見ている
3、人材面の現地化推進
「日本人が就くべきポジションには日本人が、中国人が就くべきポジションには中国人が」というような現地化ポジションの明確化と、求められる役割の定義が必要である。
現地化計画を策定する際には、1現地でのビジネスの流れ、2本社関連組織との日本語でのコミュニケ-ションの必要度、3日本的ビジネスの慣行や事情への精通度、の3点を考慮して、現地化を考えているポジションに求められる役割を定義するとよいだろう。
例えば,取引先の担当者の大半が日本人であったり、日本本社との連絡を頻繁に取る必要があるなど、日本人でなければ難しい業務が多いなら、日本人のアシスタント業務ができる人材を求めていると率直にいうべきである。雇用主と雇用者の認識を一致させることが重要である。高度な水準の日本語が必要とか、社内での不文律を知らないと業務が円滑に行われない可能性が高い、などのポジションの場合は現地化には適さない。現地化せよと言う本社の指令を受けて、コスト削減のみを目的に進めると、うまくいかないケースが多い。
現地化するポジションを明確にしたら、決定事項を中国人社員に詳細に説明し、文書、絵、チャ−トなどの媒体を通じて情報を共有することが重要である。日本人のみの単一な組織と異なり、中国人と日本人と言う異なる人類の集合である多文化組織では、互いに理解し合うための仕組みづくりが必要なためである。
文書のなかに具体的なスケジュールを記載して進行状況が目に見えるようにすることも大事である。その後、プランを変更した場合はなぜ変更したかも説明する。そのような口頭、文書によるコミュニケーション量を増やすことで、現地化方針に対する中国人社員の理解度が深まり、自分のキャリアパスを書けるようになる。
4、中国の人事管理は特殊なのか。
特殊ではない。むしろ日本の人事管理が特殊である。中国のそれはグローバルスタンダードに近い。中国人自体が合理性を尊重する国民なので結果的にそうなっている面もある。「馬上行動(すぐに行動に移す)」という信条で、よいことをすぐにとりいれることもグローバルスタンダード化を促している要因かもしれない。
ただ、中国では有期雇用が一般化している点は特徴的である。日本の終身雇用と比べると、人員の自然代謝を前提とした効率的な経営ができると考えられる。多くの日本企業は中国での経験を通じて人材管理の「世界の常識」を学んでいる。日本の本社組織の人間がここまで現地に深くかかわってきたことは今までの日本企業の歴史の中でもなかったと思う。中国以外の地域へもこの経験を生かす企業が増え始めており、この流れで日本企業の人事、組織管理のグロ-バル化が着実に進むだろう・
5、日本人駐在員向け研修
ある企業の役員8人と面接する機会があり、「役員になれた理由は何にか」という質問をした。共通していた回答は若い駐在時代に、企業マネジメントを経験したという点であった。海外では、目標のみが提示され、手探りで達成手段を考えていく必要があるため、自分の成長につながったというのである。
海外駐在を人事管理のアセスメントの観点からとらえることは一考に価すると思われる。しかし、そのときに受けることができたさまざまなサポートは偶発的なものかも知らない。やはり海外と日本の組織管理の違いなどを駐在する前に理解しておく必要がある。
日本企業の生産拠点が中国はじめ海外に移転している中、日本企業の海外市場における競争はさらに激化するであろう。それに備えるためにも、赴任前の計画的な駐在員研修が必要である。現地化の方向と矛盾するという見方もあるが、海外の組織管理をきちんと理解している駐在員がまだ絶対的に少ないという事情がある。
日本企業は、10〜15年前には、中国語能力が高い、中国の文化、歴史に精通している人材または国内事業で成功した人材を中国に派遣する傾向にあった。そのため、海外ビジネスや海外における組織管理についての理解はそれほど深くなかった。最近1.2年で、中国事業が本社の経営戦略の中心になってきたため、中国語ができて中国ビジネスに意欲を持つ若手や若いころ欧米駐在のキャリアを持つエリ−トを派遣し始めた。
中国で中国人に適した人事制度を作り上げても、それを管理し運用するのは日本人駐在員である。人事制度に対して日本的な意識や考え方を変革しないと、せっかく作り上げた人事制度もうまく機能しないのである。
6、中国における人事戦略の鍵
中国法人のトップが、中国事業の夢と会社の具体的な発展イメージを中国人社員に向けて語ることが必要である。中国人社員にキャリア形成の余地を持たせて、それを文書などの目に見える形で示すことも重要である。自分のキャリアが発展する可能性が明確に見えれば大きな動機つけになる。
第2節 知名の日系企業の経験
―大連アイリス集団
大連アイリス集団は、ポット,園芸、インテリア用品などの製造、販売を手かけるアイリスオ-ヤマのグループ企業として、1996年3月、保税区の大連アイリスを設立した。現在、大連に4つの現地法人を持ち、投資総額は7830万ドル、生産品目はプラスチック、金属用品、組み立て家具、ペット用品など3600種に上る。大連アイリス集団の李活明総経理はこう説明した。
1、人事戦略は。
当社は現地化を推進する方針だ。日本からの出向者中国で後継者を育成し、中国人担当者に業務を引き継いで帰国するシステムである。グループ内企業のアイリス木業、アイリス発展の副総経理はもちろんのこと、グループ総経理、副総経理も中国人が担当、現在5,000人の従業員のうち日本人はわずか10人である。
当社は日本語を公用語とし、パソコンのプログラムや伝票はすべて日本語で表示している。課長以上の幹部社員は3ヶ月から半年間の日本で研修にほぼ全員参加することになっている。今まで延べ400人以上の社員を日本に派遣した。
2、どのような人材を採用しているか。
大学新卒採用の際には企業文化に適合し、専攻した分野の知識を生かせる人材を採用する。その後、社内で育成している。日本語が話せないと社内システムが使えないため、日本語に加え専門能力がある人材が望ましいが、日本語、専門能力のいずれかの能力が非常に高い場合は採用することもある。日本からの連絡が日常的な購買、生産管理、システム設計、物流部門での人材を特に求めている。
3、人材育成・研修への取り組みは。
2003年から外部の講師と協力してアイリス日本語学校と呼ばれる社内の研修プログラムを組んでいる。プログラム終了時には卒業証書を出し、能力に応じて日本語手当を月50〜500元出す制度である。私立の日本語専門学校での研修も実施している。このほか、大連外国語学院と協力してオリジナルのテストを定期的に実施している。
専門知識の研修は、金型装着(成型)、物流、組み立てなど、の分野で実施している。社員ごとにスキルが足りない部分をスケジュ―ル化して、OJTや勉強会などで補講している。今後の課題は、新規事業に向けた技術、管理、
営業、製品開発などの職種での大卒人材の教育である。
4、評価、給与体系は。
人事評価体系は、日本と同じものを一部中国に適応させた。仕事に必要な技能レベルがどの程度に達しているかを一覧表にした「技能マトリックス」を用いている。例えば生産管理の現場でコンピュ−タの特定ソフトに習熟している社員には、マトリックスの該当個所に赤星がつく。2003年10月からマトリックスを用いて、大学新卒者に一年後の目標を設定させる制度を導入、どの程度達成したかを本人、教育担当者、部門長の間で面談し、評価に反映している。
評価に際しては、すべての現場でスキルマップを公開し信賞必罰を明確にするなど、評価制度を日本本社以上にオ-プンにしている。給与が下がった場合でも、理由を明確に説明している。これにより、課題を克服しようとする社員が多いためだ。
職位と等級で基本給が決まり、技能手当と設定した目標に対する実績がそこに加わる。部署ごとに基本給以外の比率は異なるが、平均20%程度である。日本語手当の割合を高く設定し、年1回評価してランクつけを行っている。一般職でも日本語に堪能な社員は管理職より給与が高い場合もある。
―松下電器(中国)有限会社
北京市にある松下電器(中国)有限公司は松下電器産業グル―プの中国における統括会社である。94年の設立当初は66,7%出資の合併会社であったが、2002年に投資化され、統括会社としての機能強化に積極的に取り組んでいる。人力資源開発中心の中村任志所長は語る。
1、人事戦略について
当社は統括会社であり、松下電器グループの中国事業全体の効率的かつ戦略的運営を目指して、全体最適の見地から機動的に働いていう。人事戦略もグループ関連会社全体を見渡しつつ、遂行している。
統括会社の機能強化に少し触れたい。従来、各合併会社が独立して事業を展開してきたため、グループ全体としてのより効率的な事業展開が困難であった。そこで、統括会社の機能を強化しグループの全体最適を実現するべく、対策を講じてきた。まず、当社の独資化を果たし、2003年度は、当社とその他の現地関連会社との資本関係の構築に取り組んだ。松下電器の在中関連会社には日本の本社が出資することが多かったが、その出資部分を当社からとする資本の付け替えを行い、傘下企業に対する資本ガバナンスが十分に発揮できるようにした。人事戦略についても,統括会社としての当社の方針に対する関連会社の理解と認知は徐徐に浸透してきている。
中国での人材活用には、元々本社が強い問題意識を持っていた。2001年、重要性が高まった中国事業に関する全社プロジェクトが立ち上がり、そのプロジェクトの傘下に「中国人材戦略タスクフォース」というワーキンググループが組織された。従来の人事システムが機能しなくなり、優秀な人材の流出が増え、その採用自体が困難になってきていたかであった。特に課題として取り上げられたのが、人材の採用、確保の集中化と多様化、経営の現地化に向けた中国人後継幹部の育成などで、現地に適合した包括的な人事システムの構築を目指した。各分野でトップランクの欧米系,韓国系,地場系の企業の人事戦略を研究し、2003年1月、当社内に人力資源開発センターを設立、松下電器グループの中国で人事戦略を実行している。
2、採用と育成の取り組みについて。
各関連会社の効率的な採用活動をサポートするのが当社の主な任務である。「人材招聘会」などのジョブフェアでは、まず当社が10ブース程度を押さえ、参加を希望する会社を募る、選考などの採用活動自体か参加関連会社が独自に行うが、関連会社がまとめて参加することにより、労働市場における松下電器グループとしての存在感とイメージが向上する。関連会社に確認すると、統一ブースを出してから採用する人材の質量ともによくなっている。
研修については、当社内に95年に設置した人材育成センターが、在中関連会社に対してプログラムを提供している。内容は経理、品質管理工程管理などの職能研修中心となっている。マネジメント人材を育成する専門的な研修プログラムが弱いという課題があったが、外部研修機関とのコラボレーションで補っている。2004年9月、当社は北京大学のビジネススクールである日光管理学院と提携した。経営学修士(MBA)のカリキュラムを土台に、当社の人材育成プランを加えた授業が行われる。一流大学のMBAコースとの提携で提供される研修プログラムは人材育成のみならず、幹部候補生のモチベーションを高める上でも有効だ。
―エース株式会社
徹底的な現地化と社員教育で成功
1979年に中国に進出したエース株式会社は、かばんの製造、卸企業である。中国の同社グループを統括する愛思集団は総資産額約6億元、総従業員約を有する。同社の製品は中国国内の100都市で500カ所の販売店や専売店で販売されている。徹底的な現地化を行っており、10カ所ある現地工場の総経理(社長)はすべて中国人。日本人駐在員は置かず、出張で対応している。同社の常務取締役の西浦偉良氏は語る。
1、人事戦略について。
当社は日本人駐在員を置かず、現地社員を大勢雇用している。駐在員より現地の管理者の方が従業員との間に壁ができずに指示を出せる。駐在ではなく出張だと、決められた期間の中で、緊張感を持って効率よく業務に励むことができ、常に新しい情報を日本から持っていくことができるからだである。
工場の総経理を中国人に任せようと考えたのは、ごく自然の流れだった。中国の現地法人に対しては、本社の基本方針だけを伝え、経営判断は各工場に任せている。中国ではまず役員会で議論を行い、最終的な決定事項を日本の役員会に報告する。経営は基本的には事情に明るい現場に任せ、可能な限り裁量権を与えている。経営方針は毎年現地で決定している。
しかし、10工場を統括する中国現地法人の責任者は自分が兼任しており、本社の意向も反映される形態がとられている。新規に進出する企業は、初めからすべてを任せると失敗する危険がある。中国には古い言葉、疑わしければ使わないし、使う以上は疑わないがある。これに象徴されるように、パートナーと長年培ってきた人間関係と信頼があったからこそ、このような業務体制が可能にあった。
2、採用の際どのような点に注意しているか。
中国では転職が一般的に行われていることから、面接の際に前職の辞職理由を確認するようにしている。採用前にしっかりコミュニケーションを採り、人材のミスマッチを防ぐ努力を怠らないことだ。さらに、能力に応じた給与を与えられるよう、入社アンケートではまず希望給与額について確認を行う。給与面のミスマッチをはじめ、採用の初期段階で起こり得る問題を見つけ出し、早期に対応をとるようにしている。
総経理や従業員などのすべての人材に対し、焦らず根気よく愛情をかけることで、会社への理解を深めてもらい、結果的に会社へ忠誠心を養うことができると考えている。従業員に対し、積極的にコミュニケーションをとる姿勢が大切だ。
3、人材の確保や育成のための施策は。
教育プログラムを前面に押し出し、従業員が自分のための勉強ができる環境を提供している。当社の場合、かばんの販売員確保がとくに困難である。そのため、一般社員ばかりでなく、短期契約社員も対象としたセミナーなどを開催している。教育への投資は必要だと考えている。この結果、人材のレベルが上昇し、各個人の給与に反映する好循環につながった。セミナーは休日に行い、出席を強要していないが、出席率は非常に高い。
当社では朝礼(晨会)を毎日行っている。中国に進出した25年前、中国人に全くなじみのなかった朝礼の導入時には、従業員のコンセンサスを得られるよう、細心の注意を図った。朝礼のメリットとして、以下の3点が挙げられる。
1、社員が仕事に入る前に気持ちの切り替えができ、仕事に対する緊張感を与える。
2、「おはようございます」という日本語を使うことで、日系企業にすすめている意識を与える。
3、朝礼という場で情報迅速に伝えることで、社内
の風通しもよくなる。コミュニケーションの促進は
士気の高まりにつながる。
一部企業は現地大学と提携
近年では、中国の大学と提携して人材育成を行う日系企業の事例が出ている。前に述べた松下電器は2004年9月、北京大学光華管理学院と提携した。松下の幹部候補生に対し、同学院の経営学修士カリキュラムと松下の人材育成プランを加味した独自の授業を行う。
ITに特化した専門教育を行う東軟信息学院(大連)では、企業のカスタマイズクラスを設置し、プログラミング言語や企業の独自技術について講義を行う。コース終了時には企業が採用試験を行って内定を出す仕組みであり、まさにその企業が必要とする人材を育成できる。
大学の就職指導室関係者からは日系企業に対して次のような要望の声が聞かれた。一つはインターンの実施。日系企業は大学に奨学金を出すケースは多いもの、インターンの受け入れ実績は乏しい。
二つは採用方法。日系企業は地元政府などが主催する大規模な就職説明会を利用して中国人スタッフを採用するケースが多い。こうした説明会に集まる人材は限定される。キャンパス内でゼンテーションを行うなど積極的に大学で採用活動を展開してほしい。
三つには採用する人材。日系企業は日本語を流暢に話す学生を好むが、日本語ができる人材は逼迫している。英語に堪能な人材の質も高いので、こうした学生も採用の対象にしてほしい。
今後の課題について
統括会社自身が優秀な人材を採用し関連会社に派遣する、各関連会社にいる優秀な人材を統括会社の主導で他の関連会社にローテーションする等、全体最適を追求する上で欠かせない方策を実行できるかどうかが、大きなポイントになる。
表1 1986〜2001年外商投資企業進出口商品総値統計
(単位:億美元,%)
表2 外?企?在?投?比例
表3 外商投資企業対日貿易
表4
終わりに
今回、外資企業の中国人労働者の意識について研究し、主に日本企業と欧米企業に対して、労働者と企業の立場に分けて研究した。この研究から様々なことがわかるようになった。
研究を通じて驚いたことは、普通の従業員の平均年収から見ると、日本に比べて欧米企業の収入は40%多い。職務の上昇に従って、両者の間の開きは大きくなっていく。マネージャー以上の職位の中で比較すると、開きは2倍ぐらいまで開いた。しかも、日本で職位の向上する機会に直面するのはすべて欧米より小さい。
また、日本企業は普遍的な採用原則によって、年功序列賃金制度を実施している。日本企業の文化と“日本式方法”に慣れないことにあるから、日本企業で就職を希望したくない人が多数にいるだと思う。だが、欧米企業より日本企業に就職したほうが保障はある。もしあなたが若干の期間に働いて、まだ十分な技術力がないと、企業はこれを「企業の責任」だと見なす。大きな誤りを犯しさえしなければ、日本企業は簡単に従業員を解雇しないので、日本企業の従業員の定着率は非常に高くて、大体80%である。これは欧米企業とても異なるところである。一方、欧米企業は今のあなたの能力に支給するのであり、明日のあなたの業績について、不満になったら、あなたを首にする。欧米企業では、従業員はいつでも“首にされる”危険の防備に用心しなければならなくて、従業員の中に自主退職する人は50%はどいる。
個人的は日本企業のほうがいいと思う。労働者に対して、日本企業には、安定であり、先輩から様々なことを教えてもらえる。一方、欧米企業には、従業員はいつでも首にされるし、先輩から何にも教えず、仕事ができなかったら、能力がないと見なす。
企業に対して、日本企業には、集団の力を重視し、個人の能力を重視しない。このようにすると、企業の発展にとっては、有利である。しかしながら、欧米企業には、個人の能力を強調をし過ぎで、企業の発展にとっては、短期の効果になると思う。
【参考文献】
1、外経貿部《中国外資統計》(2002年)。
2、中国国?院?展研究中心《中国経済時報》
2004年10月20日刊。
3、日本貿易振興機構《ジェトロセンサ?》
2005年7月刊。
4、林?生《日企?浮録》2005年。
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