日本式のファーストフードーー吉野家
序
●日本におけるファーストフード
1970年3月、大阪日本万国博覧会でケンタッキーフライドチキンの実験店が出展された。 この時、ファーストフードが日本に上陸した初めてのときであると言われている。大阪万国博覧会会場では、1日なんと280万円の売り上げを記録している。
この時から1年遅れて、日本マクドナルドが名古屋に出店。1973年吉野家が神奈川県小田原市にフランチャイズ第一号店を出店している。同年にはシェーキーズも渋谷に第一号店を出店している。日本における本格的ファーストフード時代が到来した。
1981年には、日本マクドナルドは日本人の栄養を著しく改善したとして、農林水産大臣賞を受賞している。
ファーストフードが地球に出現してわずか51年。日本では36年になる。
●最近のファーストチェーン
日本でファーストフードがこれほど急速に消費者に歓迎されたのにはわけがある。まず第一に、お客様に徹底的に奉仕する精神がそこにあったからだ。 この精神は、一流のファーストフードビジネスでは脈々と引き継がれている。
マクドナルドは日本に上陸してわずか10年で日本全国に普及し、当時問題であった日本人の栄養状態も改善し、日本の健康に多大な貢献をするに至った。
ところがそれからわずかの間に、 ダイエットをしなければならないほどファーストフードの消費が進みすぎることになる。 51年経過したアメリカでは、脂肪からの過剰エネルギー摂取量問題に対する対策が国を挙げてのプロジェクトになり、日本でもその後を追う形になっている。
今日では、消費者はファーストフードに対してでさえ、ダイエット、健康という要素に関するニーズがどんどん強くなってきている。
正確にはファーストフードチェーンではないが、コーヒーショップ「スターバックス」の延びは急激である。そこでは全粒パンサンドイッチ、グリルドチキン、低脂肪乳、サラダなどが提供され、これが消費者に受けている。 スターバックスは基本的に車で訪れるところではなく、街の中にあり、カフェラテとサンドイッチを楽しみながらペーパーバックの書籍を読むというのが定番の使い方になっている。
それに刺激される形で、ファーストフードチェーンの老舗でも 「旨い」「安い」「早い」だけのコンセプトとは異なる、いわゆる「スローフード」がつぎつぎと開発されている。もちろん、フライドチキン、ハンバーガー、アイスクリーム、ソフトドリンクといった飽和脂肪酸と過剰な糖分の定番が消えることはないが、消費者の動向は確実に変わりつつある。
企業は消費者のニーズに答える努力を惜しまない。成功している企業であればあるほどその傾向は強い。とすれば、ファーストフードから栄養学的に望ましい食品が提供されるかどうかは消費者の意識次第ということではないか。
おそらく、数年の間に、ファーストフードから供給される商品は急激に様変わりする。国民の健康に対する基礎知識が浸透すればするほど、それを後押しするはずだ。ファーストフードに対する消費ニーズは変貌し、味覚や嗜好性までも影響を受け、 その圧力によって提供される商品は変わっていくことになる。
私たちとしては、数年後のファーストフード店の店頭に、これまで「スローフード」と呼ばれていたメニューがどうどうと並び、食の選択肢が広がり、毎日の生活を楽しむことができるようになることを期待したい。
本文
第1章. 概要
第2章. 歴史
第3章. 企業理念
第4章. メニュー
4.1 全国展開メニュー
4.2 準全国展開メニュー
4.3 実験店舗メニュー
4.4 牛丼時代からのメニュー・サイドメニュー
4.5 廃止メニュー
第5章 BSEによる米国産牛肉輸入停止の影響
5.1外食市場への影響
5.2ファーストフードへの影響
5.3牛丼店への影響
5.4吉野家への影響
第6章 消費者の反応
第7章.中国の外食市場
7.1中国事業戦略
7.2中国でのブランド戦略
7.3中国中心にインターナショナルチェーン展開
7.4香港「吉野家」の成功
まとめ
第1章 概要
東京証券取引所第一部市場上場、現在の代表取締役社長は安部修仁。創業者・松田栄吉が大阪吉野町(現在の大阪市福島区)の出身だったことから屋号が吉野家となった。
吉野家の正しい表記は「??野家」です。吉野家の「吉」の字は、正しくは「??」(「土」の下に「口」、つちよし、)である。
吉野家(よしのや)は、牛丼をメイン商品とする外食チェーンストア(牛丼屋)の最大手である。株式会社吉野家ディー・アンド・シーが運営する。本社所在地は東京都新宿区にあり、日本だけでなく中国・香港・台湾・フィリピン・シンガポール・マレーシア・アメリカ・オーストラリアにも支店を持つ。単に吉牛(よしぎゅう)と略して呼ばれることが多い。
他社同様、原料牛肉のほとんどがアメリカ合衆国からの輸入であるため、2003年にワシントン州でBSE(牛海綿状脳症)感染牛が確認され米国からの輸入が停止されると牛肉の調達が不能になり、牛丼販売の停止に追い込まれたり、営業の縮小や、牛カレー丼、豚丼などの代替商品の緊急投入を余儀なくされている。
吉野家は、牛丼屋であることから 「吉牛(よしぎゅう)」 という愛称で呼ばれていたが、一連のBSE問題の影響で牛丼の販売が出来なくなり、主力商品を豚丼にシフトしたことから、自然発生的に「吉ぶー (よしぶぅ)」 という愛称でも呼ばれるようになった。現在では、株式会社吉野家ディー・アンド・シーもその愛称を認め、広告活動において広く「吉ブー(よしぶー)」(別称BOOちゃん(ぶーちゃん)) の名を利用している。
第2章 歴史
1899年 - 東京都中央区日本橋にあった魚市場に個人商店「吉野家」が誕生。
1926年 - 魚市場の築地市場移転に伴い、築地へ移転。
1958年12月27日 - 牛丼屋の企業化をめざし「株式会社吉野家」を設立。
1980年 - 会社更生法の適用を申請し倒産。店舗の急増に伴って、つゆをコストダウンするため醤油を粉末に変えたことが裏目に出る。「まずくなった」ことで客足が遠のいた。
1983年 - セゾングループ傘下で再建に乗り出す。一時期はダイエー 傘下での再建も検討されたが、最終的にダイエー側が断念。
1987年 - 倒産の元になった債務(更生債務100億円)を完済。
1988年 - ダンキンドーナツ運営会社「ディー・アンド・シー」と合併し「株式会社吉野家ディー・アンド・シー」となる。
1990年 - JASDAQ店頭市場(現・ジャスダック証券取引所)上場。
1997年 - 会社更生法の適用を申請した持ち帰りすし店チェーン「京樽」の再建支援に乗り出す。
1998年 - 高知県に出店、全都道府県への出店を達成。ダンキンドーナツ事業から撤退。
2000年 - 東証一部市場に再上場を果たす。
第3章 企業理念
長い歴史のある「吉野家」には「客観的、論理的な思考」という独特の企業文化があり、抽象的な表現を嫌い、客観的データや論理的思考をコミュニケーションの手段として使っている。
「吉野家」のコンセプトである「うまい、やすい、はやい」に表れているように、優先性の高いテーマに集中特化するという習慣も根づいている。
「吉野家」の企業コンセプトは、
一、環境の変化を先取りする企業への変化
二、グローバル・アドマイアブル・カンパニー を目指す
三、次世代を担うグローバルな人材の輩出
四、スピード感ある事業展開
従来のビジネススタイルからの脱皮を図るべく常に新しいビジネス・チャンスに挑戦し、世界中の人々に愛される「グローバルトップ商品」の開発を目指す。分社化構想に必要な多様な経験と知識、能力をもつ人材の輩出、それにビジネスチャンスを逃さないスピード感ある事業展開をモットーとしている。
第4章 メニュー
(注.2004年1月6日〜2006年3月2日まで)
4.1全国展開メニュー
豚丼
新味豚丼 並330円 大盛430円 特盛530円(2005/10/0110:00-)
豚キムチ丼 並380円 大盛480円 特盛580円
牛焼肉丼 並420円 大盛540円
鶏炭火焼丼 380円
豚鮭定食 並490円 大盛520円(ご飯のみ)
牛焼肉定食 並530円 大盛650円(持ち帰りは50円引き)
豚生姜焼定食 並480円 大盛580円(持ち帰りは50円引き)
牛すき鍋単品 並380円 大盛480円 (2005/11/0710:00-)
牛すき鍋定食 並480円 大盛580円 (2005/11/0710:00-)
豚皿 並240円 大盛340円 特盛440円(2005/10/0110:00-)
牛焼肉皿 並320円 大盛440円
プレーンカレー 並290円 大盛390円
豚あいがけカレー 並440円 大盛540円
半熟玉子カレー 並350円 大盛450円
チーズカレー
4.2準全国展開メニュー
かつカレー 並590円 大盛690円
ソースかつ丼 並430円 大盛500円(ご飯とキャベツのみ)
炙りチャーシュー丼 380円
カレーソース 190円(持ち帰りのみ)
4.3実験店舗メニュー
豚冷しゃぶ定食 並480円 大盛510円(ご飯のみ)
タコライス 380円
ぶっかけうどん 並280円、小170円
ざるうどん 280円(お初天神)
ぶっかけうどんセット 490円(豚丼並・ぶっかけうどん小)
温うどん 並280円、小170円
ざるうどん 280円(お初天神店等)
4.4牛丼時代からのメニュー・サイドメニュー
納豆定食 370円(持ち帰り不可)
焼魚定食 400円(持ち帰り不可)
特朝定食 490円(持ち帰り不可)
定食は、ご飯大盛プラス30円、味噌汁から新けんちん汁に変更プラス70円、味噌汁から豚汁に変更プラス100円
生玉子 50円(食品衛生上の観点からか、夏季は持ち帰り不可)
半熟玉子 60円
生野菜サラダ 90円
ポテトサラダ 120円
ごぼうサラダ 120円
お新香 90円
味噌汁 50円
新けんちん汁 120円
豚汁 150円
ビール 400円(持ち帰り不可)
冷酒 330円(持ち帰り不可)
酒類は一人3本まで。風営法の関係で午前0時〜6時は出せない。
ご飯 130円
4.5廃止メニュー
牛カレー丼 並290円 大盛390円
カレー丼並盛 350円 中盛400円(2004年1月6日〜2004年6月)
いくら鮭丼 450円(2004年1月12日〜2004年4月・一部店舗)
いくら鮭丼セット 450円(2004年5月〜2004年6月・一部店舗)
マーボー丼 380円(2004年1月12日〜2004年6月・一部店舗)
新マーボー丼 380円(2004年3月〜2004年6月・一部店舗)
角煮きのこ丼 380円(2004年3月〜2004年11月・一部店舗)
親子丼
焼鳥丼
牛鉄鍋膳(-11/7)
牛鍋膳
第5章BSEによる米国産牛肉輸入停止の影響
5.1 外食市場への影響
2004年の6分野(ファーストフード、テイクアウト、レジャー施設、交通機関、料飲店、ホームデリバリー・ケータリング)合計の市場規模は15兆9,719億円(前年比99.3%)となった。テイクアウト市場は中食ブームによりわずかずつではあるが市場を拡大しており、ファーストフード市場も牛丼店の縮小はあるもののハンバーガーショップの復活や回転ずし、定食チェーンなどの成長によりプラス基調となっている。レジャー施設市場は、スーパー銭湯、シネマコンプレックスが健闘しているものの、スキー場、ギャンブル場を始め経営環境の悪化から縮小・撤退するケースが増え横ばい傾向である。料飲店、ホーム・デリバリー市場は減少傾向に歯止めがかからない。これらの傾向は2005年も続き、2005年の6分野の市場は15兆9,451億円(前年比99.8%)とみられる。
5.2ファーストフードへの影響
全体では、2002年を除いては増加傾向が続いており、外食産業全体が低迷する中で比較的好調な分野である。しかし、業態によって格差が大きく、クレープ、カレー、ステーキ、そば・うどん、回転ずし、定食チェーンなどは好調に推移している。一方、ラーメンや牛丼店、天丼が落ち込んでいる。特に牛丼店は、2003年末のBSEによる米国産牛肉輸入停止措置以降牛肉の調達ができず、2004年は対前年比20%以上の大幅減となった。長期的に見ると市場全体の伸び率は鈍化しており、2004年はほぼ横ばいでの推移となった。しかし、ここ数年不振であったハンバーガー、アイスクリームショップがプラスに転じたことなどから、今後もファーストフード全体では拡大推移と見られる。ファーストフード市場、特にトップチェーンのブランド力の強い市場はトップ企業の業績が市場全体に及ぼす影響が大きい。マクドナルド、サーティーワンが復活したハンバーガー、アイスクリームショップ、吉野家が落ち込む牛丼店市場、ケンタッキー、ミスタード−ナツの低迷するフライドチキン、ドーナツショップがその代表である。
5.3牛丼店への影響
2004年 1,857億円 2005年見込 1,862億円(前年比 100.3%)2003年末の米国産牛のBSE感染確認により米国からの牛肉の輸入が禁止された。吉野家をはじめ、松屋フーズ、ゼンショーなど牛丼チェーン大手のメニューから牛丼が姿を消したことから、各チェーンとも代替メニューを導入し急場をしのぐという状況になった。米国産牛にこだわった吉野家は牛丼の販売を再開することができず大きく落ち込んだが、豪州産、中国産牛により牛丼を再開した松屋フーズ、ゼンショーは前年を上回った。この結果、2004年の牛丼店の市場規模は前年比21%減の1,857億円となった。2005年も吉野家はまだ牛丼の販売を再開していないが、直近では前年同月を上回っており回復の芽が出始めている。ただし、吉野家の大幅減、ゼンショーがなか卯を傘下におさめたことにより、トップと2位・3位グループとの差がわずかとなり、牛丼店市場は戦国時代に突入している。
5.4吉野家への影響
2003年12月24日 - アメリカワシントン州においてBSE(牛海綿状脳症)感染疑惑牛発見の発表があり、同12月26日に政府はアメリカ産牛肉の輸入禁止を決定。これに対応するため、都内を中心とした11店舗で年末年始の休業や深夜時間帯(日本時間22:00から翌朝10:00まで)の営業休止を行う。
2003年12月30日 - 深夜閉店店舗を123店舗に拡大。
2004年1月1日 - 特盛販売中止、朝定食の終日販売。
2004年1月6日 - 一部店舗で新商品の「吉野家のカレー丼」の販売を開始。その後、「吉野家のいくら鮭丼」、「豚キムチ丼」、「吉野家のマーボー丼」、「吉野家の焼鶏丼」などの新メニューを順次展開。
2004年2月11日 - アメリカ産牛肉の禁輸が長引き在庫がなくなったため、牛丼、牛皿、牛鮭定食の販売停止に踏み切る。これに伴い、前日の2月10日、一部店舗で食べ納めの行列ができた。
※但し、創業店として特別な位置付けがされている築地店や、出店契約上牛丼以外のメニューを提供できない競馬場や戸田競艇場内にある店舗では、国産牛などを使って牛丼の販売を継続するが、価格は並盛で500円、競馬場・競艇場では大盛のみの提供で650円に値上げされる。
2004年2月11日 - 茨城県神栖町(現神栖市)「124号線神栖店」で酒に酔った客が牛丼の販売中止に対して暴れ、逮捕される。
2004年2月19日 - 長崎県長崎市「長崎滑石店」で酒に酔った客が牛丼の販売中止に対して店員に暴行を加え、逮捕される。
2004年2月23日 - トリインフルエンザによる中国、タイの両国からの鶏肉禁輸処置で鶏肉の在庫が少なくなったとして、「吉野家の焼鶏丼」を3月中旬をめどに一旦販売中止する方針を発表。牛丼の販売中止を受けて代替メニューとして販売していたが、結局2ヶ月強で販売打ち切りとなる。
2004年3月11日 - 代替メニューのカレー丼などが不調で、「松屋」「すき家」「なか卯」など他チェーンへの流出が続いているため、販促キャンペーンとして3月15日までの期間限定で「豚丼」並盛を250円に値下げ、かつ期間中は他のメニューの提供を中止。
2004年12月上旬 - オーストラリア産牛肉を使った「牛焼肉丼」の提供開始。
2005年10月1日 - 豚丼、豚皿の値段を10円値上げ。同社は「牛丼で目指してきた何度食べても飽きないうまさを、豚丼でも実現するべく研究を続けてきた結果、たれの味に熟成を重ねて作り上げた自信作」としている。店内でも同内容の告知放送を続けている。
注 BSEは、TSE(伝達性海綿状脳症:Transmissible Spongiform Encephalopathy)という、未だ十分に解明されていない伝達因子(病気を伝えるもの)と関係する病気のひとつで、牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不能等の症状を示す遅発性かつ悪性の中枢神経系の疾病です。
注1)TSEの特徴
(1) 潜伏期間は数ヶ月から数年の長期間
(2) 進行性、致死性の神経性疾患
(3) 罹患した動物やヒトの脳の薬剤処理抽出材料を電子顕微鏡下で観察すると異常プリオンタンパク(細胞タンパクの異常化したもの)の凝集体を確認
(4) 病理学的所見は中枢神経系の神経細胞及び神経突起の空胞変性、星状膠細胞 の増殖
(5) 伝達因子によるヒトや動物での特異的な免疫反応がない。
注2)BSEの臨床的特徴
(1) 潜伏期間は3〜7年程度、発症すると消耗して死亡、その経過は2週間から 6ヶ月。
(2) 英国では3〜6歳牛が主に発症。
(3) 臨床症状は、神経過敏、攻撃的あるいは沈鬱状態となり、泌乳量の減少、食 欲減退による体重減少、異常姿勢、協調運動失調、麻痺、起立不能などであり、 死の転帰をとる。
第6章消費者の反応
一時は、牛丼の提供中止と代替メニューの不調で客離れが激しく、経営が悪化したが、豚丼を始めとする代替メニューの強化・改良と、積極的な販促キャンペーンで、牛肉輸入停止以前には遥かに及ばないが、ある程度まで経営は改善されている。
「早く吉野家の牛丼が食べたい」という消費者の声も強く、一日も早い米国産牛肉の輸入再開を、繰り返し国に対して求めているが、米国の安全対策が成果を挙げられていない現状、一部の消費者団体からは、「食の安全性を軽視している」「利益優先」などと批判されている。
昨年11月に米国産牛肉の輸入が、早ければ年内にも再開されることになった。これに向けて牛丼の「吉野家」は臨戦態勢に入ったが、客は戻ってくるの比率に関して、全国の男性1394人を対象に「吉野家の牛丼と米国産牛肉輸入再開」をキーワードにした調査を行った。
A.<「吉野家の牛丼」が復活したら食べるか?>
すぐに食べたい 26.3%
機会があれば食べたい 50.1%
食べたくない 23.6%
B. <BSE問題以前の「吉野家の牛丼」利用度>
よく利用した 27.2%
時々利用した 54.1%
ほとんど利用したことはない 18.7%
視点を変えて、「日本の食糧事情」についても聞いてみた。「日本の食糧自給率が40%」という現状については、8割以上の人が「危機感がある」と回答。食べ物の素材を選ぶ際の基準(複数回答)も「国産品(52.9%)」、「遺伝子組み換えでない品(46.4%)」、「無農薬品(39.8%)」で、「安ければ何でもよい(13.3%)」「まったくこだわらない(12.6%)」という人は少数派だった。
C. <日本の食糧自給率が「40%」について>
危機感がある 80.3%
輸入できるならそれで良いと思う 18.3%
その他 1.4%
米国産牛肉の輸入再開という決定そのものについては、「かなり不安」「多少不安」を合わせて約7割の人が不安感を抱いている。
D.<アメリカ牛肉の輸入再開について>
かなり不安 29.1%
多少不安 39.7%
あまり不安はない 31.1%
第7章海外展開
06年7月末時点で日本での店舗数は1009、中国を含む海外店舗数は258と発表されている。「吉野家」の海外進出は75年から、まずは米国に海外第1号店をオープンさせ、87年には台湾、91年には香港、そして92年には北京に進出している。現在、アメリカ、アジア、オーストラリアの各地を拠点に、「吉野家」の知名を世界に広げている。
7.1中国事業戦略
ア. 中国社会における「ファーストフード」
「ファーストフード」の中国語訳は「快餐」で、日本語での「ファーストフード」とは若干違う意味である。中国の国内貿易部(当時)が定めた「中国ファーストフード業発展要綱」(中国快餐発展綱要)では、ファーストフードの特徴は、「製造・販売が迅速、食べるのに簡便、品質は標準化されている、栄養バランスが良い、客へのサービスは簡素、価格は低廉」としている。要するに、これらの条件を満たす食品は、中国では全て「ファーストフード」に含まれるということである。逆にいえば、中国ではファーストフードとして日本人がイメージしているハンバーガーやフライド・チキンの類だけがファーストフードではないということであり、伝統的な食品である「包子」「饅頭」「餃子」、さらには「ほかほか弁当」の類も上の条件を満たせば、ファーストフードに含まれるということである。
欧風ファーストフードの中国での歴史は、1987年にケンタッキーフライドチキンの進出に始まる。96年末には、専業のファーストフード公司は800社程度、チェーンストア方式のファーストフード店舗は4000余、ファーストフードの販売店〔快餐網点〕は40万弱、年間売上額は400億元(飲食業全体の売上額の5分の1)に達しているとされている。中国式の伝統的なファーストフードが数多く含まれており、またそれが多数を占めているものの、その後わずか5年余りの間に、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどといった外資系ファーストフードが若者からの支持を受けファーストフード業界の売上高が飲食業全体の40%強を占めるまでとなった。
また最新の状況では、2004年一定基準値以上のファーストフードチェーン業の発展の速度は著しく早い。店舗数では2002年の1659軒から61.4パーセント増しの2678軒に増えた。この数値は一定基準値以上の飲食チェーン業界のうちの38.4パーセント(2004年)を占め、営業所得は2002年の92.8億元から、235.1億元へと大幅な成長を遂げ、2004年にはこの業界の所得での58.8パーセントを占めるまでとなった。
とりわけ外資系ファーストフードチェーンの店舗数と営業所得は一定基準値以上(年間営業利潤が200万元以上、従業員数が40人以上)の飲食チェーン業界の中で、絶対的な立場に立っており、店舗数では61.3パーセント、営業所得の84.6パーセントを占めた。いまや、外資系ファーストフードチェーンは中国の飲食業界においてなくてはならない存在となっているといえる。
イ. 中国外食市場調査による
2003年4月から中国はSARS(重症急性呼吸器症候群) 騒動があって、これにより第三次産業にとても大きな影響を与えた。この時期、SARS禍を越え新しい展開へするため、北京、上海、大連の主要大都市部を中心に調査を行った。この結果は中国における外食市場の規模、外資・国内の各外食チェーン企業、さらには食材サプライヤーの動向を明らかにし、中国外食市場の現状把握と今後の方向性をまとめた。
★ご参考 円・元換算レート 1人民元 = 約15円
@.外食市場の推移
中国の外食産業は経済成長とともに急成長を遂げ、市場規模は1994年に1,000億元に達し、2002年に5,000億元を超えた。もともと中国では地理的環境や歴史的な背景によって、小規模な単独店を中心に外食市場が形成されていたが、1987年にケンタッキーフライドチキン、次いでマクドナルドが1990年に進出したのを機に徐々に外食チェーンが浸透した。外資系外食企業の進出が中国のチェーン経営の普及
に大きく貢献しており、とくに2000年以降は、外資系外食企業の進出及び出店展開が活発化し、国内の外食企業も積極的な事業展開を進めてきた。
(1)2000年 年間総売上金額は3,753億元 対前年17%増、店舗数300万店
同年には外食企業上位100社の年間売り上げは外食市場全体の5%近いシェアを占めるに到った。私営企業、外資系企業と個人飲食店の発展が比較的速く、店舗数の増加も目立った。これらの店舗数が全体の95%程度を占めているのに対して、国有飲食店の店舗数は全体の5%程度にまで縮小してきた。しかし、技術面での特徴やブランド力、信用度などでは依然優勢を保っており、業績は国有店のほうが良い。昔からの有名店であることに加え、法人需要の会食・宴会などが間接的に有利に働いたためである。
チェーン形態の外食店が増えており、2000年には、この形態を採用している企業は外食企業全国上位100社のうち49社におよび、売上高合計の60%近くを占めた。中国の外食チェーンの数は200余りになり、中でも北京と上海でチェーン形態の普及が進んだ。
購買力の大きい大規模、中規模都市における外食産業の拡大スピードが速い。外食企業全国上位100社は24の大規模、中規模都市に集中しており、北京19社、上海14社、広州7社となった。
外食経営の規模拡大にともない、経営のグループ化が進みつつある。差別化を図った個性的な外食経営が着実に進み、伝統経営からチェーン形態の現代的経営への脱皮が図られ始めた。
(2)2001年 市場規模は対前年16%増の4,369億元、店舗数も350万店に拡大
活発化するレジャー消費に対して利便性を発揮したローカルエリア(郊外)サービス型の外食店が業績を伸ばし、中華ディナー分野は、チェーン経営への転換、配送ネットワークの確立によって成長が著しかった。都市部および農村部での生活水準の上昇,国内外からの旅行客の増加が外食消費を引き上げた。
(3)2002年 市場規模は対前年16%増の5,090億元、店舗数380万店
外資系のうちマクドナルドの中国展開は、他国ほどではないが高度成長期を過ぎた感が強まった。いっぽうケンタッキーフライドチキンは出店スピードを加速して、2002年9月の700店を年末までには780店にした。フランチャイズ展開も注目されたが、両社ともメニューとサービス品質の低下によるブランド力の維持不安から導入に慎重を期している。
外食産業は小資本で参入しやすい商売として投資家の注目を集めた。投資の活発化とともに、国内上場企業でも外資系外食企業と組んで展開するケースが増えた。
レジャー指向のライフスタイルにあわせた外食店の出店スピードが加速している。ピザハットは、2003年1月には100店目をオープンした。スターバックスも北京で2002年には30店から50店に拡大した。
(4)2003年 市場規模は対前年12%減の4,470億元、店舗数380万店の見込み
SARS(重症急性呼吸器症候群)という突発的な逆風の影響はおもに第3次産業の卸・小売り・外食サービス業、旅行・宿泊などの社会的サービス業、交通運輸サービス業の3分野で大きかった。外食市場は対前年12%減と低迷を余儀なくされると見られる。騒動の沈静化とともに再び消費は上昇の兆しを見せており、長期的には外食市場のさらなる拡大が大いに期待される。
会食・宴会などの法人需要に比べて、家庭・個人消費の割合が上昇している。価格に対する満足度から価格以外の雰囲気やサービス、ブランドなどを含めたトータル的な満足度へとシフトしつつある。
A.北京・上海地域の外食市場
中国の政治と経済の中心となるこの2大都市は、所得の高い非農業人口が多く、居住者の消費のほかに、ビジネス上の需要や観光客による消費も非常に多い。この両都市の外食市場は2002年まで、店舗数も全体売上高も全国市場をリードしつつ順調に伸びてきたが、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動で外食需要が減り、感染源を遮断するために地域の人の流動を制限したことにともない、食材調達にも影響がおよんだ。一部の店舗の休業や倒産も見られ今後、旅行業の復興、国内産業の景気拡大に期待が寄せられる。
北京市
北京市のGDPは2002年に3,130億元、都市部一人当たり年間平均可処分所得12,464元。北京市の産業構造は現代的都市機能の向上とともに第3次産業が急速に成長している。なかでも観光サービスが高い水準で推移している。市の都市部と農村部の一人あたり年間平均可処分所得が物価指数の上昇分を遙かに上回ってともに上昇している。これが消費内容の多様化や消費水準の向上につながっている。各種消費のうち外食、医療保険、交通・通信、娯楽などの構成比が増加している。
2003年の第1四半期まで続いていた好調ペースは4月から、SARS(重症急性呼吸器症候群)騒動で急激に後退した。正常回復までには、まだ時間を要すると見られる。
2002年、企業組織形態の中華料理外食店は店舗数3,700店、構成比は74%となった。ここ数年、ファーストフード利用が通勤族の流行となっており、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルドなど外資系店のほかに「馬蘭ラーメン」や「永和豆乳」のような国内資本店も速いスピードで増加してきた。生活リズムのアップや都市建設、都市機能の拡大といった要素によって長距離通勤・通学者が増え続け、短時間で食事を済ませるニーズから、ファーストフードへの需要がさらに高まっていくと見られる。外資系よりも価格競争力のうえでは国内資本ファーストフード業の成長余地がかなり大きい。
外食産業の売上高に占める食材コストが高い水準にある。合理化のために食材仕入れ構造の見直しが必要だが、収益性の高い現状では、食材流通の不備などの原因による構造改革は起こらず、食材流通改
善に伴い徐々に食材供給業界の再編が進むと見られる。
北京の注目チェーン
○北京龍城麗華快餐 1993年に江蘇省からスタートし1997年に北京へ進出した弁当販売形式の中華ファーストフード企業である。コンピュータ管理を活用し、インターネット上で注文を受け付け北京と上海では弁当1個でも宅配する形であらゆるニーズを取り込もうとしている。
○日本の吉野家 2002年からなじみやすい味と標準化したサービスを提供し、中華ファーストフードや西洋ファーストフードと異なる味覚でお客を集め、順調な展開が期待されている。
上海市
上海市のGDPは2002年に5,409億元に達し、一人当たり平均3万元を超えて全国のトップになっている。都市部一人当たり平均可処分所得13,250元。
産業構造では、第3次産業の割合が2002年でGDP全体の51%を占めた。この都市の外食市場は2002年までプラスで推移し、店舗数は3万店を突破し、市場規模は180億元に達した。国内私営の外食店の成長が最も著しかった。上海市は、国際都市に成りつつあり、ビジネス関連需要が増加、ホワイトカラー階層の社交関連消費が増加、内食から外食へのライフスタイルの変化が顕著、レジャー消費の増加などが外
食市場を支える柱となっている。
外食店の経営内容は、全国各地と同じく中華料理がメイン。国際交流の推進や新奇性の高いものへの好奇心が高まるにつれ、従来の料理のほかにタイ、インド料理などへニーズの多様化が進み、専門店も増えている。中華料理店もターゲットを絞って差別化を強調したり、イメージを明確にアピールしたりする店舗展開が増えている。
上海の注目チェーン
○上海ピザハット 1990年に中国進出を果たし、北京に次いで上海、広州、深セン、アモイなどの地域で展開してきた。2002年上海の店舗数は43。この年から宅配事業を積極的に展開し始め、30分即配サー
ビスが市民の生活に浸透しつつある。今後は、宅配事業のみを扱う専門店舗「必勝宅急送」の高成長が期待される。
ウ. 「吉野家」中国への進出
大連のオリンピック広場近くにあるショッピングセンター・ウォルマートの中には日本の牛丼専門店「吉野家」が出店している。牛丼1杯の値段は普通盛りが9元(120円)、大盛りが14元(180円)と日本よりも安い値段で日本の吉野家と同じ味の牛丼を味わう事ができる。メニューには牛丼のほかにも野菜丼や東波肉丼などもあり、気軽に日本の味を楽しむことができる。
世界各国で「吉野家」を展開しているのは株式会社吉野家ディー・アンド・シーからライセンス供与を受けた香港洪氏グループ。リスクの少ないロイヤリティー方式で中国進出を図り、ロイヤリティー収入を確保しながら徐々にフランチャイズ方式での店舗展開を図る、これが海外での事業経験が豊富な「吉野家」のしたたかな中国販売戦略である。
北京吉野家快餐公司を率いる香港洪氏グループは、10年をに、吉野家とアイスクリーム専門店デイリークイーン(DQ)の総店舗数を450店、うち北京では100店に拡大する計画を進めている。
一方、株式会社吉野家ディー・アンド・シーは02年に合弁会社「上海吉野家快餐有限公司」を設立、上海市を中心としたフランチャイズ展開を開始、当面の目標である30店舗にむけ店舗拡大を図っている。
また深センに設立した合弁会社「深セン吉野家快餐有限公司」は、深センで8店舗を基礎に、徐々に広東省におけるチェーン展開の基礎固めを行なっている。
7.2中国でのブランド戦略
「吉野家」の事業戦略は、「小商圏で成立するフォーマット作り」。そのために必要な顧客ターゲットの拡大として、女性や中高年、ファミリー層にも受け入れられる店舗環境作りなど、顧客数に限度のある小商圏での来店頻度のアップ経営を実践している。
中国でのブランド戦略についてはCSR(企業の社会的責任)活動の実行。そのひとつが99年から始めている中国における植林ボランティア活動、黒龍江省饒河県において、すでに20ヘクタール(6万坪)に10万本の植樹を行なっている。
7.3中国中心にインターナショナルチェーン展開
米国で30年かけ作り上げた「吉野家」チェーン100店を、中国では約半分の14年で達成。そして今後のインターナショナルチェーン展開は、中国を中心に徹底して行なわれる。
「食」ビジネスを通し、豊かな社会への貢献を願う吉野家ディー・アンド・シーグループ。「おいしさ、健康、安全」を理念に グローバル・アドマイアブル・カンパニー を目指して快進撃を続けることである。
7.4香港「吉野家」の成功
香港の吉野家は、本家日本の吉野家が米国産牛のBSE(牛海綿状脳症)問題で販売をストップしている間、ずっと牛丼を提供してきた。1991年に1号店をオープンし、現在26店舗を展開する香港吉野家は、地元企業の洪氏飲食集団が独自にフランチャイズ展開しており、牛肉の仕入先も日本の吉野家とは違う。ブラジル産など、複数の国から仕入れており、供給ストップの憂き目に遭わずに済んだ。
香港吉野家は大成功を遂げている。「良心品質」という日本式のサービス精神を掲げ、徹底した店員教育、メニューの多様化などで、「日本びいき」の消費者が多い香港市場で、わずか15年の間に26店舗を展開するまでに成長した。吉野家ディー・アンド・シーによれば、「世界中に展開する吉野家の中で、もっとも集客力が高いのが香港」だという。
日本の吉野家と違って、カウンター方式ではなく、マクドナルドやKFCのようにしゃれたアメリカ型のファストフード店舗を採用したのも、成功の秘密のようだ。紙コップ入りのコーラと牛丼のセット販売などは、まさにファストフードそのもの。顧客層は老若男女幅広く、友達連れ、家族連れで和気あいあいと楽しむ姿が目立つ。
日本のブランドイメージと、アメリカ的食文化のいいとこ取り。こんなところにも、香港人の融通無碍(ゆうづうむげ)な商才が感じられる。
参考: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://www.chainavi.jp
http://www.koho@fuji-keizai.co.jp
http://www.group.fuji-keizai.co.jp
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