1998年3月1日「性差の科学」討論会
女性研究者の会:京都との共同企画
(1)はじめに 文責 坂東昌子
1998年3月1日、JKK(女性科学者の会・京都)と「性差の科学研究会」との共催で
「性差の科学」をめぐっての討論会を開催しました。この会は、1997年に出版された坂東昌子・功刀由紀子『性差の科学』(ドメス出版)を素材にして、討論したいという趣旨で企画を立てました。
1.「男と女の違いは、どこまでが生得的で、どこからが環境によってつくられたものか」という素朴な疑問は古くから論じられてきました。この疑問はまた、女性論を論ずる上でも大変大切な問題です。1975年シュルロが主催し、フランスで開かれたシンポジウムは、性差を科学的に捉え、そこから人類の未来を考えていこうという意欲的な取り組みでした。しかし、これ以後ジェンダー論はその存在がみとめられるようになり、大きな流れになってきましたが、このシンポジウムの考え方や取り組みは、その後あまり大きく発展していません。『性差の科学』はこの流れを更に発展させ、今後の展望を切り開くということを目的にして出版されました。そこで『性差の科学』の内容について、関心をもつ方々に集まっていただき、忌憚のない意見交換を行う会を企画しました。特に各テーマについて、未解決の問題やこの著書で意図した目標をさらに明確にすることができればと考えておりました。『性差の科学』を題材にして、残されている疑問や課題、さらに、今後どういう形でこういう視座をもった討論を発展させればいいのか、そういうことを大いに論じ合うチャンスにできたと思います。
当日は、この方面に通じておられる方々が、東京・四国など関西近辺の各地からお集まり下さり、大変活発な討論を行うことができました。「お互いに批判や反論をも含めて、こんなに忌憚なく話し合う会があるとは知りませんでした。」といった感想も寄せられ、こういう場を持つ喜びを大いに分かち合うことができたと思います。当日は、四人の方々に問題提起をしていただき、それをもとに討論するという形式を取りましたが、討論が盛りだくさんで、十分に語り合う時間がなかったことは残念でした。しかしこれをチャンスに、 多方面から、問題を深めようという雰囲気が盛り上がり、これをきっかけに更に突っ込んだ議論ができることが期待されます。
今後もいろいろな形でこのテーマに取り上げられることと思いますので、これからも興味のある方々をお誘いくださり、議論のチャンスを積極的に作っていきたいものと思った次第です。
2.開催は1998年3月1日(日)、京大会館にて行いましたが当日のプログラムは以下のようでした。
開会・挨拶 「性差の科学」研究会代表 功刀由紀子氏
第1部 コメンテーター講演
- 1.西川祐子氏:「シュルロのシンポジュウム『女性とは何か』以後と現代の課題」
- 西川氏は、シュルロのシンポジウムの記録にいち早く注目し、この翻訳に取り組まれ、『女性とは何か』(人文書院)と題して出版されました。その後も、ジェンダー論の優れた研究者としてご活躍中で、この分野の権威者です。現在京都文教大学教授。
- 2.宇野賀津子氏:「一瞬ではない性の決定」
- 宇野氏は、『女性とは何か』の翻訳に、専門家として生物学的なサイドから協力されました。現在、性教育方面でも専門家として全国的にご活躍です。専門は発生生物学。京都パスツール研究所所属。
- 3.筧久美子氏:「『性差の科学』の今後に期待することなど」
- 筧氏は、神戸大学在職中、総合科目等で女性問題を取り上げられ、女性問題について深い造詣をもっておられます。『性差の科学』の作成過程でも原稿を読んで頂きさまざまなコメントを頂きました。。専門は中国文学。奈良大学教授。
- 4.池内了氏:「性差の科学と学術のジェンダー構造」
- 池内氏は現在名古屋大学理学研究科所属ですが、北海道大学、東京天文台、大阪大学などいろいろな研究機関に属して、そこで研究をたちあげて来られた方です。1つの研究機関にほとんど一生を費やす研究者が多い中で、ユニークな存在で、「1つのところに長くとどまっているのはよくない」と思っていられるようです。研究業績のみならず、エッセイストとして鋭い批判をこめた文章で、マスコミにも良く登場しておられます。現在学術会議会員で、女性研究者の地位委員会の委員でもあります。
第2部 討論の部
シュルロ以後の情勢をふまえて、この著書の内容に批判を加え、今後のこの分野で論じるべき課題を出し合う。現代ジェンダー論の流行の中で、地道でしかも実りある取り組みができました。
- 赤松良子氏:「討論を終えて 今後の展望」
- 赤松氏は、ご存知のように元文部大臣で、その前に労働省婦人少年局長など歴任され、国際的な場で女性の地位向上のためのリーダーシップをとってこられました。『性差の科学』でも討論部分において指導的役割をはたしておられます。現在文京女子大学教授。
討論会記録1、討論の部
討論会記録2、討論の部
討論会記録2、資料